『闇権力の執行人』

鈴木宗男著。2007年発行の文庫版にて。この間、この人の本を読んだ感想を、歯切れ悪く友だちに対してむにゃむにゃしていたら「こっちの方がいいかも」と貸してくれた。何冊か貸してくれた中で興味はこの手なので、今読んでいるタイの小説を終えたらまずこれを読むかなと思って、その前に何となく開いたらもうやめれなくなって、こっちを先にした。切れ味が良くボケてない。告発スタイルのものにありがちな、保身と表裏一体じゃないかというひっかかりがない。内容があまりに醜悪なので、すっきりしてジョークも交えた文体でないとちょっと耐え難い感があると予想できるが、ひじょうに巧く書いてあるので飽きずに読むことができた。相当長いけど必要な長さ。ただ、ちょこっと重複が気になるなって思ったくらい。これを読むと鈴木宗男ファンになりますね。投票用紙に新党大地と書きたくなり、少しくらいの献金なら、という気持ちなる。佐藤優が解説で、日本の選挙がロシアに似てきたと言っている。ロシア人の選挙に対する姿勢はあちこちの本で書いているが、つまり、悪い候補者と、とても悪い候補者と、とんでもない候補者の中から後ろの2つを捨てて悪い候補者に入れるしかないというもの。恐ろしいことだ。それでもまだ政治家は、とんでもないことをしていると選挙で落ちる可能性がある。しかし闇権力の執行人達は違う、というのが暴露されている。対象は外務省。

何しろ全部実名。そして、いかにもどっかから引っ張ってきたという感じなぼけ気味の顔写真が入っているのがとってもいい。暴露されている内容は、ああ日本ってどうなるのと悲しくなるもので、今の島をめぐる応酬においても、こういう本に書かれていることを基礎知識として見ていると、色々感じることがあるものだ。組織が腐っていく過程というのは多く共通している点があると思うが、外務省におけるそれを、そこに深く関わっていた当事者が解説してくれているのだから説得力巨大。テレビを見ないから時々の騒ぎを画面で見てなくて、田中対鈴木とか鈴木対清元みたいな構図が画像的にインプットされてないし、そもそもマスコミ報道がどこまで何を伝えてるかは、はいはいここではこうね、としか思えないので、よって鈴木宗男が一方的に悪人であるという図もインプットされてなかったけど、そういう思い込みがあったならもっと面白かったかもしれない。ちょっと驚いたのは、個人情報保護法に対する考えと政党に対する考えが、そうだよなと納得できたこと。政治家の書いた本ってちっとも面白いと思ったのがないどころか、呆れる方が多いけど、まあ、そんなに読んでませんけど、これは桁違いに良かった。今になって読んで遅いという感じもしない。こういうのを読むと、本の価値を感じることができる。たった1000円でこれ、素晴らしい。そっか、これは自分で買ったわけじゃないが。どの政治家もこれくらい書いてくれると判断材料のひとつになるんだけど。活字は後で検証できるし。
by kienlen | 2012-09-16 11:45 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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