中島岳志『ヒンドゥー・ナショナリズム-印パ緊張の背景』

中公新書ラクレ、2002年に初版発行。しばらく前に買っておいていったん読み始めて何か都合が悪くなりそのままになっていたのを読み返したらあまりの面白さに、何で中断していたんだと不思議だったけど、出だしがちょっと饒舌気味というかくどい感じというか、慣れるまでに少し時間が必要な感じ。ヒンドゥー教徒がモスクを破壊するという事件があり緊張が高まっているまだ過中に、著者が、ヒンドゥー教を使ってナショナリズムを高めようとひじょうに幅広い活動をしているグループの調査に行ったフィールドワークをかなり細かく記述して、後になってからイギリスの植民地政策による影響や、そこで宗教がどう扱われたかや、現状を見るにあたって欠かせない知識を丁寧に教えてくれている。この本については、中島岳志が好きなので読みたかったというのが一番大きな理由で、その次が、やはりインドの印象が、単に団体旅行でちょっと訪れたというだけなのに、あまりに強烈だったというのがある。その後に読んだインド関連の本も何か共通して感じるものがあって、それが何なのか知りたい感じをずっと持っていた。

フィールドワークの記述って、枠組みのないというか、自分が分からないのだとなんだか退屈してしまうという印象があるのだけど、この本はその点が親切で、要所要所にちょっとした解説が入る。それと効いているのは、著者の感想。いいな、やっぱり、という感じ。このバランスと温かさが好き。このフィールドワークの様子の後に、宗教ナショナリズムの台頭の背景になっているイギリスの植民地政策に関する基礎的な話が初心者向けに的確に解説されていて、ここも大変に面白いが、最後が現代インドからの問いということで、リベラリズムの限界を指摘しているけど、インドを舞台にすると、なるほどひじょうに分かりやすい。こういう土壌があるからちょっとだけでも感じたあの雰囲気なのか、というのが勝手な納得。軽く読めるけど深淵というか、普遍的な重さを感じられる内容だった。すごく良かった。満足感大きい。ヒンドゥー教って何って全く分からずにいて、かといって調べるほどの必要性もなくいたが、それもなるほど、だった。うーん、良かった。
by kienlen | 2012-08-07 08:13 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
プロフィールを見る