『スポーツは「良い子」を育てるか』

永井洋一さんという、サッカーチームの指導者でありスポーツジャーナリストでもあるという方の著。この本を出先の本屋で見つけた時、面白いタイトルだなあと思った。スポーツと良い子って何か関係あるの、と。でも思い当たるフシはあった。息子が小学校で少年野球を、その後は部活でバレーボールをやっていたというと、かなり多くの人が「スポーツやっていれば大丈夫よ」と言ってくれるのだった。こういうのって、おはようこんにちわ的挨拶と同じ社交辞令だろうということは想像つかなくもないが、社交辞令が分からない自分としてはつい気になる。何が大丈夫なんですか?まあ、しかし挨拶に対して「何がおはようなんですか」と聞いたところで始まらないから追及しない。でも、この本のタイトルを見て、そうだ、スポーツしていれば大丈夫って信仰もありだと思い当たった。だいたい息子自身、今になって「あの時バレーやってなかったらどうなっていたか分からない」と言ったことがあった。やはりちょっとぞっとした。つまり、少年野球を止めた時にたまたまバレー部から声がかかって続けることになったのだが、勉強するタイプではなくオタクではなく友達と遊んでいたいごく普通の少年の居場所ってほとんどない。ぶらぶらしている友達同士でつるんだらどうなるかも、なんか想像つく。そういうタイプなんで。タイ人だし、とタイ人に言うと納得してもらえる。高校もまあ部活目的だった面は大きい。

そんなんで読み始めたのが、ストップしていた。前提が自分のような者からするとかなり極端なのが気になってリアリティを感じられない。親も監督もここまで勝ちにこだわるのかい、というところが。でも、スポーツの話しを聞いたりしていると、これは現実かもしれない、それに著者はスポーツチームの指導者としての体験を含めて書いていることだし、と思うようになった。それで再読で読了。スポーツの効用はある、しかし子供の時から勝ちだけにこだわり勝つためのチームを作ることによる人間性の育ちという面での欠落への警告の書ってことになるのだろうか。子供のスポーツに大人がどう関わるかということ。それからそもそも人間だけが行うスポーツとは何かみたいな話しも面白かったし、オリンピック選手の話しとか、知らない世界なだけに興味深い話しが色々あった。スポーツに造詣深い人なら多分知っている話しなのだろうが、そうじゃない人のために目配りが行き届いた内容になっていると思った。ここまで極端か、という疑問はずっとあったが、最初の印象よりずっと面白い本だったなあ。そうそう、息子がスポーツ好きということで「大丈夫」の中には「スポーツ推薦の枠が使えるかも」という含意もあったようだった。その事にもかなりのページが割かれている。私は著者の意見に同感。
by kienlen | 2012-05-18 08:22 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30