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『働きながら、社会を変える。-ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む』

アマゾンで何となく直感で購入。いい本だった。書いているのが20代の若い男性、しかも投資のプロフェッショナル。というと、どうも一定の先入観を持ってしまう。なんというか、押し付けがましさとか暑苦しさとか、一面的な価値観とか、つまりひとりよがり的というか。勝手な思い込みはいけませんね、と、この本を読んで反省。読まなくても反省しなくちゃいけないか…。一般対象に読みやすく工夫された構成、癖のない文章がとっても平易でストレスなし。帯のキャッチも興味を惹くもの。内容もひじょうに興味深く、何か自分がずっともやもやと抱いている問題意識に訴えるものだった。それぞれ何かしている人はその人なりの適性でやるわけだが、自分に引き付けた時、そして多くの私らの場合、デカイことはできないのである。でも、話題になりやすいのはデカイことなのである。よって、あっち側のことだ意識がこっち側には形成されてしまいがちなのである。そのこと自体を問題だと思っても、その問題を提起する場所もないに等しいのである。そして無気力になるのである。そしてそれぞれが持っている小さな力を生かすことができないのである。小さな力だって集まればでかくなるかもしれないのにな、なんて思っても集まる方法が難しいのである。なあんて、であるであると断定するのも問題だろうが、そういうところはあるように思えてならない。

で、この本である。ざっくり言うと「機会の平等は保障されたい」と思う著者が、児童養護施設の現状を知り「機会の平等が子どもの時からないのは酷すぎる」と確信する。何かできないかと摸索する。結局行き着くのは、それぞれ本職のある人達が全員パートタイムで参加する組織で、それぞれの専門性を活かした支援をするということ。事務所も専従職員もないので固定費がほとんどかからず、集めたお金を直接当事者のために利用することができる。重要なのは適材適所。自分がやるより他の人がやった方がいいことは適材にやってもらう。自分がやった方が80%の人よりもうまくできることを行う。よって組織は多様な専門性を持った人が集まる方が独善的にならないという点でも効率の点でもよろしい。著者の専門は金融であるからその視点での発想が、そうでない者にはユニークに感じられる。報酬を得なければ兼業禁止条項にも触れない。子ども達の現状が改善され、自分たちの本職での発想も豊かになる。実に今日的。今の通信技術を利用すれば過去には無理だったことが可能になる。時代にマッチした新しい組織モデルを作りたいという使命感もあるようだ。私自身は、実は児童養護施設についてもどかしい思いを断片的にではあるが抱いていることがあってこの本に興味を持ったのがきっかけとしては大きかったが、細かい点を含めて参考になるし、元気も出てくる本。ああ、著者は慎泰俊さんという方。
by kienlen | 2012-05-14 15:51 | 読み物類 | Comments(0)

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