空中庭園のこと

映画に詳しいわけではないので、深読みもメタファー解読も抜きして単なる感想で『空中庭園』を取り上げたい。これ、自主上映で友人がチケットを売ってなかったら-つまり扱っているテーマ的には惹かれないということ-多分行かなかっただろうから、劇場公開できなかったことで行くことになったというパラドックス。ただ、人生ご縁とご運と思っている自分としては、こういう機会に恵まれたことを在り難く思っている。映画の魅力のひとつは、何も起こっていない、言葉も発していない、それなのに最初のシーンからいきなり涙が出る、ドキドキすることがあるという点。本だと、ここまでストレートな感動を最初のフレーズで味わうことは、私の感受性では無理だ。で、空中庭園、最初はちょっと期待感を覚えた。タイトルと、あまりにイカニモな郊外型マンションがゆれるシーンがそのまんま。ここまで最初にやっちゃって、どこでどういうどんでん返しをしてくれるんだろう、という意味での期待感。でも、その後の展開は、ただただマンションの中に集約されるばかりで、ひたすら内面に向かうのみ。内面を描くのであれば、大変な力量がいると思うのだが、描き方は半端だった。詩人か幻想小説家になりたかったのになれずに、受注ライターとか社会性のあまりないジャーナリストになったとか、画家になりたかったのに商業デザイナーになった、みたいな感じ。

つまり、リアリティの軸がどこにあるのか分からないフラストレーションがあった。ストーリーは家族社会学のテキストにちょっと塩コショウしただけみたい。でも社会学のテキストだったら社会との関連で考えさせるようになっているのに、母子関係とイジメという心理面以外の状況説明皆無で、リアリティなし。では、こじんまりとまとめるかと思うと(バッシングみたいに)表現方法は大仰。そのアンバランスを笑いに転換するかというとしてない。もう何が言いたいのよ!と怒りたくなり、でも、イメージを膨らませる努力はしました。自分が20歳若かったら、家族持ちでなかったら、心理学を専攻していたら…。どれも徒労。翌朝の友人からの電話。「あの程度で人を殺す幻想を抱くなら、私なんかとっくに大勢殺しているわよ!」。穏健、事なかれと平和を願い、攻撃性に恵まれなかった性格の私でさえ、「そうだよねえー」と返事をしていた。
by kienlen | 2006-04-12 01:21 | 映画類 | Comments(0)

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