中島岳志著『秋葉原事件-加藤智大の軌跡』

ずっと気になっていて読みたいなあ、しかし買うのもなあ、単行本だしなあ、という状態だった本。でも手持ちで読みたい本がなんとなく品切れ状態になってアマゾンで注文した。何で気になったかは著者の中島岳志が好きだからで、テーマよりもそっちの方への興味の方が強め。私はテレビを見ないのでこの事件がテレビでどう扱われたかをそう詳しく知っているわけではなく、また映像も見てない。ただそういう自分にインプットされていた情報というのは、派遣労働者の虚無みたいなイメージ。かといってマスメディアの流すイメージが事実とも思ってないので、まあ、イメージと事実をつなげること自体がおかしいが、とにかくその程度の認識しかなく、かといってネット等で別の視点からの報道や感想や何かを調べてみるというほどの力も使ってなかった。そういう自分が読んだということだ。先入観なしというか。

全体にひじょうに淡々とした記述スタイルで、それは自分には心地悪さがない。事実と事実のつなぎ方に違和感を覚えなかった。つまり、意識的な誇張はないと思われるし、信用できるという印象だった。その上で、本当にびっくりしたのが主に母だけど、教育というか躾というか、である。かわいそうすぎるというのが第一印象。そして別の育ち方をしたら全然違う人生があったんじゃないかと思った。そういえば週刊誌で弟の手記というのを読んだ記憶があるな、ってことを思い出した。それも引用されているのだが。読む前にデスク脇に置いておいたら娘が早々に目につけて「それ読みたい」と言った。読んだら貸すよと言った。途中で「かわいそう」を連発していたら「それでも学校は休まなかったってことを、不登校の講演の時に出てきたじゃない」と言われた。そうだ、精神科医が例に挙げていたんだ。帯にある「なぜ、友達がいるのに孤独だったのか?」という疑問は、読むとなんか、分かる。感覚として分からないのはネットとリアルの関係だ。世代の相違だろうか、これは。人間が生きるのに必要なことって何なんだろうか、という原点のようなことをひじょうに感じさせるものだった。最後に泣けた。説明が難しい泣け方だった。
by kienlen | 2012-03-03 18:23 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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