『困ってるひと』

大野更紗さんという著者の壮絶なる闘病記。一般人どころか医者でも知らないような難病中の難病の。こんな面白く読ませてくれる闘病記はあまりないんじゃないだろうか。これによって医療制度、障がい者福祉制度、自治体間格差から人間関係から諸々が浮き彫りになるという重層的な内容になっていて、読む価値が高いと思って娘にも勧めているところ。たまたま著者は大学院生でビルマの難民の研究をしているところだったことから、その難民と自分を同一視してみたり実はもっと難度が高そうだとなってみたりと、テーマは「難」にあるようだ。研究費が出てタイ国境にいるビルマ人キャンプにいく直前に体調を崩し、読んでいるだけでも痛くなるくらいにひどいのに、それをおしてタイ行きを決行して倒れてしまうところからの始まり。いかにもネット世代な語り口で面白く綴られている。

実家が福島のど田舎。そこで田舎の優等生として育った現代っ子なので怒られたことがない、ということになっている。痛みにも弱い。これが医師との関係なんかにも影響することになる伏線みたいなもの。あちこちの病院で物理的痛さと一緒に病院や医者からの仕打ちを経験しながら、診断が下るまでの1年間のたらい回しの様子もすごいが、それで遂に自殺しようと覚悟するのだが、それは序の口で、なんとか偶然が重なって東京の難民ばかりを受け入れる病院にたどりついて、読む側としてはほっとする間もなく、その後の凄まじさはさらにエスカレート。こういうのってまさに渾身の1冊というんだろう。こういっては何だけど、才能をここで開花させて社会貢献するための試練なんじゃないかという気がする。印税が、せめていくらか生きるための足しになるといいが…。困っている人から見えてくる世界というのは足下から上に無限大に広がっているわけだ。それがよく分かるし、生きている限り備えとして必要な知恵もたくさんある必読書という感じ。イラストもかわいくてよくマッチしている。ネットで連載していたものみたいだけど過度にすかすかじゃないからいい。それにしても痛い、辛い。
Commented by tate at 2011-08-21 16:44 x
さすがKさん、的確に紹介してくれてありがとう。私も産後原因不明の関節痛、筋肉痛になってしまい一時期は寝たきりを覚悟したので、ちょっとだけ著者の経験と重なりました。そうそう飲んだよ「プレドニン」って。すごく自分本位だけど「私は治ってよかった」としみじみ思ってしまいました。
Commented by kienlen at 2011-08-22 06:48
tateさんのお勧めがあったので書店で発見して読む気になりました。こちらこそありがとう。体験の有無にかかわらず価値のある本だと思います。治ってよかった、よかった。
by kienlen | 2011-08-20 18:30 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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