イルポスティーノ

チリの詩人ネルーダに関する資料展示とクーデターの記録映像の上映会があるということをミニコミ新聞で知り、行ってみることにした。若い時に、今思うと当時は流行だったんだろうか、よく分からないが、詩を読んだりしていたのでネルーダの名前は当然知っている。詩集もあったかもしれない。かといって歴史とか時代の認識があったわけでもなく、その後フォローしているわけでもなく、覚えているわけでもなく、なんだか懐かしいな程度のあいまいな動機だった。友人を誘ってどうやら私設の資料館らしき、それがまた立派な建物に入った。こういう場所を知っただけでも面白い。敷地内にレストランがあったのでいずれ行ってみよう。資料館に入るとスタッフの方が説明するに「記録映像はここにない」とのこと。つまり上映はできない。新聞記事で紹介されちゃったのにいいのかな、いいんだろう。私達以外は内輪の人のようだったし。それに代わって「イルポスティーノでもいいですか」と尋ねられた。これは一度見たことがあるはずなのだが、断片的な映像が浮かぶだけで内容を覚えていない。郵便配達人が山の上に自転車で届けに行くシーン、海辺のシーン、それくらい。当時見た理由は映画好きの友人の大お勧めだったから。DVDを借りてパソコンで見るのじゃあ、インパクトが薄いのだろう。

もう一度見たいので「いいです」と答えた。白板をスクリーンにして簡単な上映会が始まった。ラッキーだった。とてもいい映画だったんだ。何も覚えてないとは何事だ。イタリアの島に避難していたネルーダを専門で担当することになったのは、やっと読み書きができる程度の教養の持ち主の郵便配達。この人がもう適役というか、素朴さと無知な感じと野心とが混じった感じが最高に素晴らしかった。後でネットで見たら撮影終了間もなく亡くなったとのことだった。この世界的な有名詩人との交流が始まり、親しくなり、それから物語が生まれていく。きれいな映像と音楽。詩の力とその罪。とってもいい映画だった。思いがけないいい時間をいただいたと思う。ラテンの陽気さと人の悲しみと可能性と愛と、思想と政治と庶民の暮らしと、全部がきれいになって詰まっていた2時間だった。そして最後の衝撃。ああ、実にいい映画だった。紹介してくれた友人をまた見直し、偶然に感謝。劇場で見る機会があったらもう一度見てもいいな。
by kienlen | 2011-08-09 08:00 | 映画類 | Comments(0)

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