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言葉を忘れた1か月

1日中雨模様だった。日曜日から連日、朝出て缶詰めで仕事して夜に帰るという会社員並の生活も今日でおしまい。仕事先付近の食堂でお昼を食べていたら、和服姿の女性がスーツ姿の小さな子を連れて入ってきた。多くの学校で入学式で、そういえばウチの子達もそれぞれ進級して、5年生と中学3年になった。私が入学式に参列したのは中3になった息子の方で、娘の方は失業中だった夫だけ行った。集合写真があるが、娘の顔があまりに黒いので笑える。もともと日本人に混じったら浅黒い方ではあるが、そんな程度ではなくズバ抜けている。というのは、入学式の2か月前まで彼女はタイに居たからだ。最初の会社をクビになった夫は町工場に職を得たが、何度病院に行っても原因不明の痛みに襲われて眠れなくなり、私の提案でしばらくタイへ戻ることにし、同じく私の提案で娘も連れて行ってもらった。保育園児を抱えていては諸々面倒なのと保育料もかかるのと、ゼロ歳で来日した娘をしばらくタイ語の環境におきたいという親心からだ。

タイ古式マッサージで夫の背中の痛みがすっかり消えたこともあって、2人は意外に早く、3か月程で帰って来た。たったこれだけの期間なのに娘は日本語を忘れていた。いいチャンスである。私と夫の間はタイ語だし、いっそ家庭内言語をタイ語に統一したらいいと思ったのだ。しかし他人が関係する物事は思うようには運ばない。娘は父親とはタイ語で会話するが、私や兄には沈黙し、態度もなんとなくよそよそしい。父娘癒着母娘乖離とでもいおうか。それに就学前から詰め込み教育のバンコクのナーサリーに行っていたものだから、机に向かって文字なんか書いている。でも来日した時もいきなり保育園に入れたように、再来日した時もまたすぐに保育園に戻すと、じきに元通りの日本語になり元通りの日常になった。でも、ずっと後になって保育園の先生が「あの時、○ちゃん、1か月間全く話さなかったんですよ」と教えてくれた。家ではフツウだったのでびっくりして、そういえばちょこっと勉強したことがある言葉を思い出して「緘黙児ってヤツですか?」と聞いてみたら「それとは違うんですよね、だからお母さんにも言わなかったんですけど」と言われた。娘自身も説明できず、今も謎の一件になっている。
by kienlen | 2006-04-05 21:18 | 家族と子供の話題 | Comments(0)

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