『私たちが死刑評決しました。』

こういうタイトルで7人が裁判所前に立っている。自分のイメージの中のアメリカ人像にぴったりの7人。それでこれは陪審員の話だろうなということは予想できる。そして日本の裁判員制度をにらんでの翻訳出版なんだろうなということも。図書館でたまたま見つけて借りた本。私自身はここで扱われている事件について全然知らなかった。2002年のクリスマス・イブにカリフォルニア州で起きた、妊娠中の美人妻が殺害された事件で、ハンサムな夫が逮捕されたというもの。ひじょうに大きな話題となった事件だそうだ。この裁判に際して12人の陪審員が選ばれる過程から、審理の様子、法廷内の様子から死刑判決まで、かなり詳しく書かれている。で、なるほど、カリフォルニアの裁判制度ってこうなのね、というイメージは膨らむようになっている。ただ、それについていちいち説明を加えているわけじゃないので、疑問点は多々でてくることにもなるが。こういう本は日本では絶対に書けないわけである。なぜなら裁判員は知り得た内容を終生口外してはいけないからで、アメリカの陪審員は公判中は厳しく管理されるものの、終わってしまえば誰に話すのも自由。よって、こういうノンフィクションが可能になる。大変に大きな違い。

それにしても、映画でもあるし噂にも聞いているが、裁判って陪審員に向かってアピールするものなのだということを最初から最後まで徹底して教えてくれる内容だった。それについて懐疑的な部分なんて皆無で、なんか、アメリカ的というか、すごいなあって感じ。まあ、歴史が違うから当然なのかもしれないが、司法は専門家という思い込みからスタートしている国とは違うわけだ。そして、それはそれで市民の良識というか、そういう所に落ち着くものらしい、ということも感じさせるようになっている。陪審員ひとりひとりの葛藤は予想できるにしても、内部告発による陪審員の交替が結構頻繁にあるということは知らなかった。いろいろ考えさせられたけど、事件そのものの解明がなされていないというモヤモヤは拭いがたい。だからこそ陪審員の苦しみも長く続くという面はあるんだろうし、実際、解明なんてほど遠いものが多いのかもしれない。この本の目的は事件の解明にあるわけでないのだからいいのだが、それにしてもなあ…。これで死刑か…。人が人を裁くことの意味について考えるには、実際の話だから読みやすい参考書になると感じた。
by kienlen | 2011-06-19 15:29 | 読み物類 | Comments(0)

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