『原発国民世論-世論調査にみる原子力意識の変遷』

図書館で偶然見つけて借りてあったのを読んだ。1999年発行でデータは96年くらいまでのもの。この続きが読みたい、と思ったが出ている様子はなし。タイトル通り、原発に関する世論調査から国民の意識の変遷を見ていくもので、なかなか興味深い内容だった。調査は質問文によっても回答が違ってくる可能性が高いことへの言及もあり、そのため質問文をそのまま掲載及び著者による意見も書いてあるので判断材料が重層的になっている。構成も文章もとても易しく読みやすい。つまり、原子力を軍事利用と平和利用に分けて前者を悪として喧伝した50年代、60年代の原発は平和利用として「バラ色」と分類している。公害問題が表面化する70年代は公害の中に位置付けて原発への反対が高まる。そして80年代、スリーマイル、その後のチェルノブイリの事故もあり世論はさらに厳しくなり原発推進に賛成と反対が逆転するのが85年。90年代を「不安拡大」と分類している。こういう大きな流れの中に、原子力船「むつ」の運命、各地で頻発していた原発事故と事故隠しの様子を折りこみ、推進したい人も登場し、ブラックユーモアにもならない原子力の歴史にもなっているという内容。

書いているのは元朝日新聞科学部の2人で、そもそも科学部の発足が原子力と切り離せない関係にあるということで著者のいずれもがこの分野の方々。立場については「本書は原子力開発を推進する立場にも、あるいは反対する立場にも立つことなく、あくまで原子力に関する国民世論をできるだけクールに…」と表明している。世論調査からの考察という時に、どうしても気になるのがメディア。今はネットの影響も大きいのでこれを分析することは難しいように感じるが、この本の時代だとマスメディアの分析で足りるのじゃないかと思うと、何らかの形でこれがあったらなあって思った。電力会社及び政府による広報とメディアの関係とか。たださすがに配慮はあってメディアの論調を紹介しているのは親切と思うけど依拠しているのが社説で、社説の影響力ってどうなんだろうか。いずれにしろ科学的にメディアの影響を実証するのって難しいみたいだから、しかも「客観的」にこだわった場合の難しさはさらに大きいだろうし。でもいい本だったな。質問文の問題点指摘で外国との比較は参考になった。つまり「希望」と「現実」を分けて聞く方法。これをしないと混じってしまうという指摘にはごもっともと思った。それと原発に関して有為の差が出るのが男女差。女は常に男よりも反対が有為に多い。その理由の考察には、ちょっと物足りない感じ。男社会の根深い問題について追及して欲しかったな、とまで求めるのはお門違いだけど、分からないものへの畏敬と不安の念に男女差があるように感じてならない。
Commented by jun at 2011-05-03 12:13 x
男社会の問題を、男の私でもつくづく思います。
かつてある公共団体の専務理事の専横に対して私が腹立たしく思っていたところ、彼の幼少を知る近所の女性が「あのバカやろが」と私に吐き捨てるように言ったのを聞き、胸が空いたのを憶えています。
原発も支えるように多額の工作費がその団体にも出されていました。
さて、「ミツバチの羽音と・・・」の映画が当市でも上映されます。7日の夜7時から北部公民館で¥500です。私はもう一度見ます。
では。
Commented by kienlen at 2011-05-04 08:09
junさん、おはようございます。映画のことはまだ観てない人に紹介してます。1度観てあると勧めやすい。工作費の使い方基本から変えて欲しい。
by kienlen | 2011-05-02 09:28 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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