『これからの「正義」の話をしよう』

この大変な話題作。買うのを迷っていたら友人が持っているというので、借りて読んだ。時間がかかった。発行から4か月足らずで66版。すごい。早川書房はミステリーが好きだった若い頃にお世話になった出版社なので、良かったなあと思ったりもする。「今を生き延びるための哲学」という帯の文句には惹かれるところ。講義をテレビで見た友人も感動していたようだったけど、私はテレビはずっと見逃している。ついこの間も震災に関連してサンデル先生の話が放映されるという番組欄を見て、見てみようかなと思っていたが忘れた。テレビはまた見るのが面倒になっている。本は、日常に起こっていることを例に挙げて、それを◎◎主義ならどうするか、みたいな一般にも分かりやすいスタイルで書かれている。とはいえ、就寝前の酔っ払い状態とか半分睡眠状態とか食事しながらとか、気楽に楽しめるようなものじゃなく、かといって今の自分にとって本気で読みたい内容というわけではないので、半分くらいは字面を追っていただけという気がする。そして字面を追うだけでの理解はとうてい無理。これって、こんなに売れているけど、学生さんや職業の関係を除いて、趣味の読書で皆さん読破しているんだろうか。

一応最後まで目を通したものの、後半部分ではだんだん飽きてきた。そこまで本気出して読むような状態に自分がないことはあるけど、これは「今を生き延びるための哲学」といえるのだろうか。今のような特殊状況の時にあると、読める本と読めない本があるなあと感じる。知の部分だけってのは多分だめ。この本では事例にはいろいろ日常に起こりうるコンフリクトというか迷いというかがいくつも登場するが、やっぱ、生きるか死ぬか、食えるか食えないか、みたいなところになるとちょっと違うなという感じがする。女も奴隷も除外して、というか、肉体に近いというか、面倒なものを除外して論じた市民社会みたいな感じというか。政治哲学だからそういうことなんだろうか。まあテーマは「正義」であるから、どろどろのむき出しの個人を超えたところで論じてこそ成り立つのだろうが。あとはゼロから国が始まったアメリカと、日本のような国との違いも感じる。こういう議論を日本で応用するのってどういうことになるのか、そっか、解説書を読んだ方がいいのかもしれない。高尚なゲームという感じは、汚染されつつある地面で生きている者にとってはどうもピンとこない。それで良しとしていいのかどうかは考えちゃうところ。
by kienlen | 2011-04-19 11:19 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31