東郷和彦『戦後日本が失ったもの-風景・人間・国家』

なんとなく買っちゃった本。庶民とは別世界に育った著者の博学と深い思考と歴史観と愛国心と正義感に敬意を抱いているためで、別の人がこのタイトルで書いたんだったら読もうとは思わないと思う。しかも帯は「平和の代償に日本人は何をなくしたのか?」だ。なんだか、なくしたものを回復するために平和を捨てよう、みたいに取れなくもなく、ちょっと馴染みにくいと思うのは曲解か。ネットで連載していたものをまとめたエッセイ集。面白いのもあれば、そんなにでもないのもあった。育ちが違うってこういうことなんだな、というのが隅から隅にまで行き渡っていて、選挙で選ぶよりも、このようなエリートが表に立って国を率いるのがいいんじゃないか、みたいな、国民主権社会には不適格な駄目国民になり下がった気分になってしまう。

日本が強い国であり続けなくてはいけないという一線は崩れることがなく、そのためにはどうであらねばならないかという提案が具体的にいろいろ示されている。庶民を相手にどうのこうのというものではなく、やはりこれは施政者側の方に向けたものだろうと思う。政治家、官僚のためのテキストかな。庶民レベルで参考になるといえば、ナショナリズムと排他主義の高まりの危険。この当たりの説明はとても分かりやすい。国体、皇室の章も、A級戦犯として獄死した東郷茂徳の孫に育ったという立場だからこその視点で力が入っている。それとこの男社会が日本の衰退の一因、とは言ってないけど、そういう意味の章はあり、外交官だったらそれを指摘して当然だろうなとは思う。もうちょっと書きたいところだけど、眠くなってきたので以上。
by kienlen | 2011-01-28 22:47 | 読み物類 | Comments(0)

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