石毛直道『食卓の文化誌』

目が覚めて枕元の電気をつけて昨夜の本の続きを読んでいたら娘から「起きてる?」と呼ばれた。「目は覚めてるけど本読んでる」と答えたら「じゃあ、いい」と言われた。用事は何かと思ったら朝飯だった。こういう親の習慣で息子は本嫌いになったのかもしれない。娘はその道をたどらなかった。どっちかというと母のようになりそうだ。ということで読み終えた食文化の本。食文化って本当に面白いなあというのが、このところしみじみ感じていることで、こういう本を読んで、ほほう!と疑問がひとつひとつ氷解していくのが楽しい。この間のベトナム料理の感想を友人に話している時に「私はお出しがきいた料理が好き」と言われた。ベトナム料理というのはお出しがきいて、薄味で自分好みであろうという予測。その、出しという文化が発達したのはどうしてかというのはこの本で詳しく説明されていた。日本料理に出しは欠かせない。肉食文化がなかったから油脂不足。その代わりというか、つまり油脂と出しは役割的には似ているのだそうだ。

書かれたのは70年代だから、ここで報告されているような民族独特の食文化や生活様式で今は廃れてしまったのはあるんじゃないかと想像する。そういう事を考えながらも、少なくともこの時点では体験されていることなので貴重な記録。そもそも、一昔前なら今日のご飯をどうするかに心を砕かなければならなかった庶民が、このような食文化に興味を持つこと自体がすごいことだ。宮廷でしか発達していなかった多様な食文化が、宮廷の料理人が町に出ることで一般に広がったように、世界の食をめぐるお話だって、日常的に世界の食といくらかでも接していなければ興味を惹かれないんだろうけど、実のところこの頃の食に対する感動のなさにがっくりしているわけだ。つまり自分の食に対する欲求が、世界の珍味を食べてみたいとか、ちょっと手に入らないような高級品を食べてみたいとか、5つ星レストランで味わいたいとか、そういうものであれば、興味の対象は限りないのだろうが、根っからの庶民根性にがんじがらめになっているためかどうか、そういう方向にはなく、どうしてここではこれなんだろうか、なんである。となると、とりあえず本ってことになる。そしてとりあえず東南アジアと日本って似ているということは思った。搾乳文化の分布も面白かった。
by kienlen | 2010-12-25 10:31 | 読み物類 | Comments(0)

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