『歴史世界としての東南アジア』

山川出版の世界史リブレットの中の1冊。桃木至朗著。この間、書店で購入したら家にあるのとだぶっていたものだ。読んでみたら、だぶって買うだけの価値のある本だった。このシリーズは歴史学の門外漢にも分かりやすく書いてくれていてありがたく重宝している。何がいいかって、注釈がそのページ内にあり、専門用語や過去の議論を簡潔に解説してくれているので初心者に読みやすい。新書版だとこういう芸当をしにくいからA5版サイズの意味がある。地図や図版も見やすい。薄い割には読むのが簡単じゃない親切で濃い内容。ありがとうございます。東南アジアが歴史学の中でどういう扱われ方をしてきたかを説明しながら-それはつまり歴史学がどう発展してきたかを一般対象に感じさせるものでもある-多様な東南アジア内の差異も見えてくるし、なんだかとってもいい本だった。

自分にとって今回のベトナムの旅というのは、意味が大きかったように思う。日本との比較的な視点というよりは、東南アジアということでタイとの比較めいた視点は拭えず、何が違うんだろう、何が似ているんだろうと考え続けたが、いくつかのヒントはもらったような気がする。著者がベトナムを専門にしているのも偶然だった。タイにいてつくずく感じたことは、父系相続を基本に考えてしまう日本人の癖についてだった。タイが双系相続だということはタイの本で読んだことがあって頭にあったが「・・・そもそもタテにつながる線としての系譜の観念のない「無系制」社会が多く・・・」というあたりは、はあ、納得って感じ。ただ「近世以降のベトナムを除く」というくだりもある。自分にとってここらへんはひじょうに興味深いところだった。日本にいると、現実対応の前に規範意識が立ちはだかっているように感じることが多いように感じるが、ここらへんはヒントかもしれない、なんて思った。次の本に取りかかると仕事が延びることになる。迷う。読みたい、我慢、読みたい、我慢。
by kienlen | 2010-12-16 18:18 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
カレンダー