『普天間基地はあなたの隣にある。だから一緒になくしたい。』

伊波洋一著。やっと本が読める状況になり書店をぶらぶらした時に偶然見つけて入手したものの1冊。一見岩波のブックレットみたいな体裁ながらかもがわ出版。遠くながら伊波さん、がんばって下さい、の気持ちにて。しかし一瞬買うのをためらった。理由は、ぶらぶらしていた書店が大学の生協だったからだ。教科書は平積みされているが、これは棚にひっそりあったもの。1冊だけだ。私なんかが読むよりも学生が読んだ方が価値があるに決まっている。しかし1000円+税を出してこういう本を買う学生がいない場合、ここで売れなければ返品かもしれない。買えば補充もあるだろう、でも補充がなかったら学生の目に触れないことになる、さてどうすべきか…という迷いと希望を込めた。大げさか。でもこの本の目的は、基地問題って何だ、そうはいっても沖縄に基地がないと日本の防衛上困るでしょ、などの関心を抱いた層に向けて易しく解説しているものであるから、やっぱり若い学生が読むのにふさわしいのだと思うが、若くない元学生が読んでも充分な読み応えはある。本気なのだという気迫が伝わってくるのと、根拠に説得力があるのと、オリジナルな情報も含まれているから。

話しかけるような文体で、まず伊波さんの沖縄の1953年生まれゆえの経験から。遊んでいると遺骨がごろごろ出てきたこと。自分の生い立ちに続いては基地の生い立ち。話を広げないようにしているので、ひじょうに分かりやすい。戦争から生き延びて戻ったら土地も家も飛行場になっていた、希望の本土復帰を果たしたらまたもや見捨てられて多くの基地はそのまま。それどころか普天間のように拡大していく様子を、話を広げないのでやっぱり大変分かりやすく説明してある。しかし圧巻は、アメリカの戦略の変化が詳述されていることで、メディアを通じたものもあるが、直接聞いたものもある。戦略の変化とはもちろん国家間戦争からテロ対策へのシフトであり、そのために米軍再編は必要で、グアムへの移転もその戦略の中に位置付けていること。テレビを見ない私が特別マスコミ情報に疎いとしたら、多くの日本人はマスコミを通じて知っていることになると思うが、しかしこの本を読む限り、政府が肝心の情報を公開していないのだから、今のマスコミの現状では報道がなされるはずもないと思われる。伊波さんの主張ははっきりしているので両論併記も迷いもあり得ない。長いタイトルの意味は内容を読めば分かる。基地が雇用を創出している、日米合意がある、基地は抑止力となる、などの説で迷っているなら必読。
by kienlen | 2010-10-17 09:32 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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