『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』

安田浩一著。これも良かった。「外国人労働者」として取り上げているのは主に中国人の研修生とブラジルの日系人。研修制度の問題は当初から多々指摘されるところで、多少は聞きかじっていたつもりだったが、自分で見たわけでないのでどこまでがどう事実なのかよく分からなかった。これを読んで、なるほどひどいもんだと思った。とにかく数が多いのですべてがすべてひどいわけではないだろうが、制度そのものを問題なしと考えられる人はまずいないと思う。つまり実際には単純労働者として雇われているにもかかわらず労働基準法が適用されないという巧妙なしくみ。携帯を持たせないとかパソコン禁止とか、逃亡防止策のいろいろとか、これは奴隷労働と言われてもおおげさではないように思う。逃亡防止には逃亡しようなんて思わない労働環境にすればいい、という主張はごもっとも。残業代がだいたい時給300円。雇用側としては、安くなければ外国人を雇う意味がないわけだから、それの何がいけないんだ、ということになる。そのへんの言い分も生々しい。

研修生制度の変化というか拡張というかをみていくと、企業の社会的責任というものまで考える余裕があるんだろうか、と思われるような小さな事業者も受け入れが可能になったことにひとつのポイントがあるように思う。本書にも養豚業を営む老夫婦が登場して、そこの研修生のとんでもない労働環境が紹介されているが、私もタイ人でちょうど同じような目にあった人と会ったことがある。豚小屋の隣の小屋暮らし。お米くらいは支給されるがおかずは病気になった豚を自分で処分して食べるか空き地で栽培した野菜。水道水は飲用ではなくて飲用は母屋からもらう。風呂がないのでドラム缶利用。仲間がいればまだマシだが、ひとりで大量の豚の世話をする。確かそんな環境だった。で、この本に登場するのもかなり似ている。輪をかけているのが送り出し側のとんでもない搾取構造。単に「研修生自身が借金してくる」と聞いても実情が分からないが、中国にも足を運んで結構詳しく書いてあるので分かるようになっている。正面から日本政府の場当たり的外国人政策というか無策を告発するような作りにはなっていないが、国の政策がここまで個人を直撃するのだということが、外国人を通じてみるとよけいに分かりやすい。まずは、こういう事実が少なからずあるというのを提示することだけで価値がある本と思う。後半のブラジルの様子も興味深かった。それにしてもさすがにここまでくると、この分野のルポが多様化している。
Commented at 2010-08-19 01:41 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kienlen at 2010-08-19 08:27
おお、ご当人からのコメント!ありがとうございます。こちらこそ、はじめまして。こんなささやかなブログですから、紹介というよりも感想メモでしかないのにご丁寧なコメントでこちらこそ感激です。それにしても研修生制度は多様化し過ぎてしまって問題点が見えにくい中で、分かりやすく整理されたとってもいい本だと思いました。ちゃんと紹介できるような場があったらしたいと思っているところです。タイにもお出かけ下さい。タイも外国人労働者だらけ。
by kienlen | 2010-08-14 14:46 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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