鈴木孝夫『日本語教のすすめ』

読書記録を書く時間がなくていくつも飛ばしているが、この本は本当に面白かったので時間を巻き戻して記録。相変わらず面白いです、鈴木孝夫先生。帯に「50年の集大成、究極の日本語講座」とある。こんな充実した日本語講座を新書でたったの740円で読めるなんて、本っていいなあ。もっとも映画を見ると「これだけの内容を本で読んだら何冊何年かかるやら。そもそも何を読んだらいいか分からないし、映画って素晴らしいなあ」と思うし何かを見たり人に会ったりすると、メディアを通じないことの面白さを感じるから、どれもいいのですが、本は本でやっぱりいい。まずは日本語とはどんな言語かという解説である。そういえばこの間、外国籍児童生徒に関する会議で、ある先生が「ユニクロの社内言語が英語になる時代です。日本の外国籍の子が日本語を学ぶのでなく英語を選ぶ可能性は高い」という話をした。だから日本語を教えるなという話ではなかったように思うが、つまり時代の変化を伝えたかったのかな。そういうことは前から起こっているわけで今さらじゃないと思うけど、日本の田舎町でもそういう話題を出す時代になったということなんだろう。

鈴木先生の主張によると、日本語は大言語のひとつに入るのだからもっと広げよ、ということになる。それはさておき、面白いなあと思ったのは、日本語というのが「社会の上下を区別する必要のない言語」という特徴を持っているとされている点。英語との比較で論じられているのだが、つまり日本語は漢字があるおかげで読み方を知らなくても意味は理解できる。よって専門家じゃなくても専門用語の意味するところが想像できる。英語は違う。難しい専門用語は専門家にしか分からない。アルファベット表記だから英語圏の人なら分かるだろうというのは誤解で、英語という言語が日本語と違って意味を伝える表記をしていないから、ということ。よって英語には高級紙と大衆紙という区別が生じてしまうが、日本語の新聞だとどういう階層でも読める全国紙があるのである、ということ。深く納得してしまった。そもそも言葉を分かるってどういうことなんだろうか。そうそう、その外国籍児童生徒関係の会議でアンケートを取るということで「読み書き」というレベルチェックも課せられていた。「読み書き」って乱暴に言われたって、まあね、言っている側は「日常会話」との対比で読み書きを出していると想像するが、ひらがなを覚えて読むことはできるが意味は全然分かってない、というのがまずは始まりである。言われた通りにひらがな書けるけど意味不明だとしたら、これを読み書きレベルのどこに入れたらいいんだろう。なんて事はこの本のテーマではないが、とにかくとっても楽しく読める本だった。
by kienlen | 2010-08-14 09:52 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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