『長寿大国の虚構-外国人介護士の現場を追う』

井出康博著。とてもいい本だった。きちんとした取材と丁寧な運び。問題提起の仕方も納得できるし、読みやすさの点も申し分なし。外国人介護士の問題が何かということの本質に迫っていると思う。つまり、もうメチャクチャ。何がって利権あさりの官僚と、それをちゃんと主導できない政治。介護という、誰にとっても重要な分野がこれである。暗澹たる気分になる。それに国内問題であるのと同時に外交問題でもあるわけだからますます暗澹。介護福祉士の資格を取ったばかりの友人が、受験勉強中から盛んに言っていたことは「こんな試験外国人が受かるわけないよ」である。それでも試験内容が有意義であればまだ分かる。必要な知識は必要である。ところがそうでもないことが、この本の中でも暴露されている。そしてそれについての厚労省の見解もある。まあ、お役人とのやり取りはたいていの場合と同じようにここでもお笑いである。お笑いで済ませられないのにお笑いになるって、やはり何か根本的に間違っているとしか思えない。

日本の外国人政策については「表玄関は閉めてバックドアを開けている」というような言い方をされて来た。つまり外国人労働者というのは表向きは受け入れていない。ところが事実上は入り口を用意している。それが日系人とか研修生とか。いずれも「労働者」ということには表向きはなってない。でも、この介護士に関しては、労働者なのであるから、初めての外国人労働者ということになる。それがこの有様。そして本書によると国の見解としては「人手不足だから受け入れるのではない」のだそうだ。じゃあ、なんで?ということも書いてある。こういう二重スタンダードを取るということは、責任逃れ以外のどういう効果をもたらすのか、凡人には思い付かない。いくらなんでももっとマシな公式見解を示すべきじゃないだろうか。少なくとも凡人に理解できる程度のレベルからの説明。こういう事って現場で外国人が苦労してます、とか、介護する側とされる側の交流とか、施設の対応とか、そういう報告を予想しがちだが、それを含めてもっともっと核心を突いている。事業仕分けというか、全体を仕分けないとマズイでしょう。帯の惹句は「本当の介護地獄の幕が開く」。外国人介護士という回り道をすることによって問題が鮮明になる。
by kienlen | 2010-08-01 20:20 | 読み物類 | Comments(0)

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