奥田英朗 『家日和』

昨日温泉につかりながらこの本を読んでいたら「こんな所で読めるなんていいですね」と声をかけられた。本当に極楽極楽という気分だった。この間初めて行ってみてすごく気に入った温泉。何より便利なのは遠くないこと。それでいて高台なので景色が良く、完全かけ流し。大きすぎず小さすぎずの規模も適度。湯温もちょうどいい。それにひじょうに魅力なのは地元の野菜を直売していること。昨日はこの目的が半分くらいだった。昨日は種類はあまりなかった。娘の好きなピーマンと、常に消費の多い玉ネギをそれぞれ多目に買う。巨大で美味しそうなダイコンがあったが、どうもダイコンというのは家で作るものというカテゴリーにすっと移動してしまって買ったことがない。ウチは煮物よりも炒め物が多いので使いにくいのもあるし、単なる好みでもあるのだが、それでもあまりに美味しそうでナメコをダイコンおろしで食べたくなっていたらなんと「自由にお持ち下さい」になっている。温泉に入る人にはタダということでいただいてくる。食堂もあるから地元産のとろろご飯でランチにした。どんぶり飯を平らげる。

この本は温泉で読むにはとってもふさわしいものだった。奥田英朗は基本的に好きだが、かといってえぐられるような感動みたいなのとはほど遠く、物足りないと感じる時もある。でも、自分のようにそもそも軽い人間には、その方がリアリティがあるといえばある。小説をあまり読まないのでそんなに比べられないけど、奥田英朗のは悪人がいなくて、いじわるな人もいない。いじわるとか悪意を持つというのは、ものすごく情熱のいることだと思う。面倒をいとわずに執着する元気がないと通常はできないことであるから、悪意を描くにはしつこい人間を作らないとならない。それが面白いんだろうけど、自分のような人間関係について面倒くさがりは、しつこさに感心はするが身近には感じられない。その点、奥田英朗はリアルだ。それと一番好きなのは笑えること。うん、これが一番重要かも。何事も笑いの要素は欲しい。軽く楽しく読めるので露天のベンチで最後まで読んだおかげで湯につかっている時間はちょっとだった。虫は這い上がってくるが、面白い本と適度な気温。周辺は深い木々の森。とっても気持ち良かった。出てくると携帯に仕事のお付き合いのある社長から着信記録。その足で打ち合わせに行くと「飲み食いに行くか」ということになった。いいタイミングでリラックスした日だった。
by kienlen | 2010-07-10 10:37 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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