中山千夏『幸子さんと私-ある母娘の症例』

この本についてはよく読む雑誌で知った。面白そうだなと思ったけど注文してまで買うほどの興味とも違う。たまたま図書館で必要な本を借りる手続きをしている横のワゴンにこの本が入っているのを発見、即借りた。結構期待があったせいか、最初の方は、何か物足りない感じがした。期待というのは、多分ものすごく強烈な母親のイメージを持っていたせいだと思う。一体どのくらい強烈なんだろうか、という期待だったと思う。この期待が裏切られたことがまず良かった。母のあれこれをあげつらうんでは、はいそうですか、って感じだが、そんなチャチなものじゃなくて、ここまで突き詰めれば共感なり反感なり、深い部分で共鳴することが可能だと思った。ひじょうに面白かった。女ならたいていの人は読める本なんじゃないだろうか。男ならどうか、というのはもっと興味があるが、まあ男で読む人は中山千夏のファンか、あるいはどういう人なんだろう。

私のもうひとつの興味は、中山千夏その人だった。テレビを見てこなかったというのは今になって世間のたいがいのことが分からない自分になってしまったことの大きな原因だと思っているが、そんな自分でも知っているのがこの人だ。ただし『男たちへ!』という本がなぜかあったり、そういえば議員だったっけ、というような次元でしかなく、ひとりの人間像としては結びつかないでいた。若い頃に彼女達の活動をすごく評価している友人がいて、本があるのはその影響だろうと思うが、私自身は世の中の流れみたいなのを分かっていないのである。そういうひっかかりがこの本を読んですっきりした。昔、砂場で遊んでいた時に山を作って友達と別方向から掘ったトンネルが開通した時の、あのようなすっきり感。母と娘の関係性も面白かったが、こうだからこうなったんじゃないかという想像力をあれこれ働かせることができたのも面白かった。中山千夏という人が好きになった。それと優れた子だからこそ親が子育てにのめりこめるんだろうとは常々思っているが、こういうのを読むと、こんな優秀なお嬢ちゃんじゃなければどうなっていたかな、と考えてしまう。まあ、答えは大方の親が知っているわけだ。その大方を知るには極端を知る方が手っ取り早いという例かもしれない。
by kienlen | 2010-05-19 14:48 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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