『「才能」の伸ばし方-五輪選手の育成術に学ぶ』

タイトルで一目瞭然の通り、五輪選手のコーチに取材した本。雑誌の連載に加筆したとのことで短か目な章が10章で、取り上げているのは9人。選手当人は一言登場するかしないかで、コーチの見抜く力と育成術とその結果に焦点を当てている。著者はスポーツライターの折山淑美さん。新書で読みやすいためすぐ読めてしまってコストパフォーマンス的にはいかがなもんかと思うが、面白いし気楽に読めて結構感動できて、短い時間にちょこっと読んでも前後のつながりが分からなくなったりするもんでもないから、持ち歩いて読むとかお酒の入っている時にもぴったり。結果が明瞭なスポーツというのをテーマにするのは話がこんがらなくていいもんである。まあ、その分月並みになってしまう可能性もあるんだろうけど、さすがに五輪選手育成となると、当人もコーチも凡人ではないから気合いが行間からも伝わってくる感じ。

北島康介、オグシオ、末續慎吾など、いくらスポーツには疎いといっても聞いたことや見たことのある選手達のコーチ達が次々に登場。コーチ自身の競技歴からくる挫折と栄光と考え方がまずあって、それが育て方にも影響していることが分かって面白い。一話ずつがコンパクトながら、というかコンパクトだからこそ、無駄な部分がなくてエッセンスが伝わってくる。どれも大変面白かったが、フェンシングという競技をいきなり大衆に有名にさせた太田雄貴の章のロシア人コーチは特に。五輪や国内の各種競技連盟みたいなものの政治性とか問題点を声高に指摘するような下りはほとんどないが、それでも必要最低限には触れていて、特にこのフェンシングでは強化対策があったからの成果というのがよく分かる。ということは、別の競技が犠牲になっているわけだ。才能に恵まれ、優れたコーチとの出会いがあり、そして環境が整った上での五輪での成果ということが臨場感たっぷりに分かり、尋常でない努力をするということに対しては畏敬の念を覚える。スポーツ根性モノという分野は昔からあるけど、なるほど日本人って実際にこの根性ゆえに勝っている面が大きいのだということも見えてくる。根性の動機が外国に比較して金でないことの強さを指摘していた人もあった。面白かった。
by kienlen | 2010-05-09 18:08 | 読み物類 | Comments(0)

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