『クーデターとタイ政治-日本大使の1035日-』

友人から頼まれて購入した数冊の本の中に入っていたので引き渡し前に読ませていただいた。これは大変興味深い本だった。もう何年も続いている政治の混乱の中に、大使という立場でいた小林秀明さんという方が書いた本。王室の方々、そして次々と変わる政権の要人と会見しては、その人となりを観察している様子に臨場感があって面白い。大使の仕事って何なのかという一端も覗ける。大上段に構えるでなく、自然体な視点で抵抗なく読めた。タイ情勢に興味のある人には役立つ本ではないだろうか。タイの専門家としてタイに赴任したわけではないので、日タイのカルチャーギャップ的な様子もさり気なく盛り込まれていて軽く楽しみながら、固有の情報をたくさん知ることができる。

著者がタイに赴任したのは2005年。タクシン首相が強大な権力を誇っていた時期で、その後クーデターが起き、混迷を深めるタイ政局。このタクシン首相との話し合いから始まっている。大きな人気を背景に自信過剰になっているんじゃないかという感じが伝わる。出来事と感想、控えめな憶測という日記のようなスタイルなのが読みやすく説教臭なく偉そうじゃなく全体的に好感。自分がバンコク在住時に政治家として活躍していた人達の名前がたくさん出てくるのでイメージしやすいのもある。タイ王室の王子さまがお世継ぎである男の赤ちゃんを著者に抱っこさせようとした時に、大事なお世継ぎを抱っこして落とすなど万が一のことがあったら…と、とまどう様子がおかしかった。この時代の日本人男性ってこうなんだ、と。
by kienlen | 2010-05-05 15:23 | 読み物類 | Comments(0)

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