『二十歳からの20年間』

友だちに借りた本で、別の友だちに回してしまったためすでに手元にない。著者の宗形真紀子さんがどういう経緯で二十歳でオウム真理教の出家信者になったか、どういう修行をして、どういう仲間がいて上司がいて、どういう命令が下って、どうしてそれに従ったのか、そしてどうして後で振り返るとその「魔境」を抜けることができたのか、という主に心性風景を綴った本。そもそもこの本を借りることになったのは、1968年という年について語ろうという会を友人らが始めて、著者がその年の生まれであるから持ち込まれた、というようなことなんだろうと思う。私はそれはともかく読みたい感じがして借りたもの。そしてひじょうに興味深い本だった。「心性ノンフィクション」と帯に書いてある通り、徹底して心性風景であり、時代や環境への言及はかなり少ない。それがまず興味深い。やはり魔境に入るということは、自分を取り巻く環境というものを排除できるということなんだろうし、入らせる側にしたらそれをどこかでするということなんだろう。

オウムの事件の時はバンコクにいた。よってリアルな空気を吸ってない。メディアを通じて語られているものを少し見たくらいで当事者がこうして振り返っているのは初めて読んだ。ここまで徹底して説明していただくと、普遍性を感じるレベルまで掘り下がっているなあという感じがする。組織に同化する心理とか、DVから逃げられない心理とか、いろいろな人間関係の理解にも適用できるところまで。で、誰でもこうなれるか、というと変な言い方だが、誰にも素質があるんだろうか、というのが興味のあるところ。自分自身の若い時を振り返ると、まあ危なかったんだろうなという気はする。かといってこの著者のようかというと、分からない。というよりも、自信がない。ここまで何かを突き詰められるかというと全く自信がない。それなりに自分と向き合うということはしたようにも思うが、あくまでそれなりであって、途中で面倒になるし、じきに目移りもする。あとは、導師を求める気持ちの強弱が人によって相当に違うというのは日頃から感じていることで、これが強くないと入信は難しいんじゃないだろうか。しかし対象をいろいろに変えて考えることは可能である。権力だったり名声だったりも導師に取って代わるものかもしれないし。とにかく興味深く読んだ。
by kienlen | 2010-03-17 09:05 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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