『生きていてすみません』

なんだかよく分からない構成の本だ。著者は佐川一政。でもこれは著者なのだろうか。インタビュースタイルであったり対談スタイルであったり、独白スタイルであったりといろいろで、それぞれが本当にそのスタイルなりの過程を経ているのかどうかが分からない。佐川さんといえばある年齢以上の人には多分何らかの形で記憶のどこかに残っていると思われる、カニバリズムの人だ。フランスと日本の法律の穴に落ちた形で、裁かれることなく社会に出た、ということらしい。この本を読むと。そもそもこの本がなぜウチにあるかというと、図書館の本の除籍の時にもらってきたもの。身辺にいろいろあって集中力が相当に欠如している時に軽い本を読みたいと思ったのにこれというのが見つからず、この本を引っ張り出してみた。なんかこの本そのものの全体的な意味が不明だなと思いつつも結局最後まで読んだのは、結果的に犯罪を犯すまでに至る動機とか心理が、これまで自分が予想していたカテゴリーに入らなくて、それが何なんだろうという興味で読み進めることになってしまったから。

あの事件の時に自分がどう感じたかということは覚えてない。相当な報道があったらしいが、当時はテレビも持っていなかったし、社会への興味もあんまりないまま悩みつつ生きていたんだと思う。人に対しての想像力を働かせるほど余裕がなかったのかもしれない。この本では報道についていろいろと書いてある。当時からこうだったのか、という感じ。今、まさに問題にされていることを彷彿とさせることが書かれているが、当時の報道の様子を知らないので、どう考えたらいいのか分からない。とにかくいろいろ報道されてしまったことに当人から説明します、というのが基本にあるようだ。表現者がそういうことをすることがどうかって疑問は「解説のかわりに」に書いてある。そういう本を20年もたってから読むというのがそもそもミスマッチ。ちょうどこの間の食の文化誌の本でカニバリズムに触れていたことも加味しながら読んだけど、文化としてのそれと個人の嗜好というのは違うんだろうから参考になった気はしない。結局、その後はどうなったんだろうか。関係者にとっては人生を決定的にする、あるいは人生そのものを奪われていることなのに。パリに留学していたというこの人は絵も巧いんだな。本棚の隅にあってなんとなく気になっていたのをとりあえず読んだというところ。
by kienlen | 2010-02-21 16:49 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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