村上龍『最後の家族』

旅先に持参した。1度読んだような気がしないでもないが、電車の中や切れ切れの時間に読むには大変便利な本。水に濡れてボロボロになっているので途中で処分してもいいなと思ってこれにした。ひきこもりの男の子となかなかたくましい妹と、専業主婦の母親と終身雇用を前提に生涯設計し、その通りにあるところまでは進む父親という家族を、それぞれの視線から描いているもの。村上龍のを読んだのは昔昔、若い時の『限りなく透明に近いブルー』以来。その後のは有名なののタイトルを知っているだけで読んでないので、斎藤環氏の長い解説で想像しただけ。ステレオタイプのようでいて、それぞれの人物がリアルで面白かった。解説によると綿密に取材したそうで、ひきこもりやDVやその支援や、家族に起こることをたっぷり盛り込みながら、なるほどというまとめが待っている。こんな風にうまく進んだらいいのだが、とこういう状況にあると思うかもしれないが、しかしこれはまじめに家族をしているのになんでこうなるんだ、と感じている人にはすごく参考になるように思う。参考書という感じ。

ウチの家族は、そもそもこのようにあれない状況からスタートしているから、同じようにはなれないと思うが、でもこのようにあり得る状況にあったらこうなっただろうか、ううむ、分からない。という意味で誰にも感情移入は難しいのに、でも大変面白いのはこの社会の家族というものの核心みたいなところを突いているからなんだろうな。今はホテルでテレビを見ながら書いているのだが、テレビドラマで新婚の妻が「私はこの幸せな日々がずっと続くと信じていたのです」というくだりがある。そういうことを自分は思ったことがあるんだろうか。この本の親というのも多分そういう風に思える人達のようだった。こう思える、思えないの差はどこから生じるんだろう。育った環境としては、公務員だった親の元で育ったので、今日が続くと思える人間になっても良かったのに、どっかで狂ったのだ。深く感動したり新鮮だったわけではないがいい本だったと思った。
by kienlen | 2010-01-30 00:13 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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