福岡伸一『世界は分けてもわからない』

福岡先生の本に感動して3冊目に挑戦したが、少々無謀な気がしなくもない。だって難しい。レトリックの高度ますます上昇で追いつきません、と思う場面が多々。やはり分子生物学について知識ないと・・・と思っても分子生物学の知識がある人が、帯にあるように「15万部突破!」ということで15万人いるのかどうか、となると、一般向けの本であるのだし、だったら私だって・・・と思っても、核心の場所までは船で50年かかりそう、くらいな漠然とした雰囲気の分かり方に留まっている。流麗な文章につられて本を読む楽しみは十分に味わえるけど、文学書じゃあるまいし、華麗な文章にうっとりさせるのが目的ではないんだろうから、私は読者の条件を満たしてないと思う。というわけで、とにかくこの本も美しい。美しいが長いカタカナのたんぱく質とか酵素とか酸とかの名前は聞いたことのあるものもわずかにはあるが、知らないものがほとんどで、何が何だか分からない。「科学ミステリー」というカテゴリーにしているみたいなので、ミステリー小説のように登場人物の名前を一覧にして、記憶力の悪い読者用に解説を書いておいてくれるのはどうかな。

でも、福岡先生が伝えたいことの大きなひとつはタイトルにもあるように「分けてもわからない」ということであり、そもそも部分というものが成り立つかということであるから、単体で登場させて性格付けしちゃっていいのかは大いに疑問のあるところだ。今まで読んだのと同様に、顕微鏡を覗き込むように描写したかと思うと天空を仰ぐという具合のスケールの大きさというか微細さというかが混じっているのが魅力。これで分子生物学じゃなかったら分かりやすいだろうに残念だ、なんて自分の不徳の致すところを棚に上げるのは論外ではあるが、ここまで科学的にしないミステリーに重点を置いた科学ミステリーを書いてもらえないかなあ。すごく面白そうなんだけど。実験室内の人間模様とかデータの捏造とか、怪奇だけど生物ってこうなんだな、という普遍性を感じさせるもの。ここでめげずに『動的平衡』にも挑戦してみようかな。
by kienlen | 2009-12-29 10:16 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31