『ポル・ポト伝』

久々に一定の時間を使う本を読んだ。ニューヨーク生まれの歴史家デービッド・P・チャンドラー著のポル・ポトの伝記。94年の発行時点ではまだポル・ポトは生きていたわけだ。この年はまだ私はタイにいて、カンボジアの和平問題が連日報道されていたが、シアヌークが日和見だとか、フン・センはベトナムの傀儡だとか、そんなナントカカントカという表面上の噂しか知らず、今思うとなんて無知だったんだろう。かといって今が進歩しているかというとそうじゃないので、この本をやっとのことで読むことにした。それでインドシナ戦争とは何かとか、インドシナ諸国の複雑さと苦悩と、列強の国々の思惑とか、そしていつものごとく、結局多大な被害を被るのは一般庶民であることの不条理等々を今さらというか改めてというか感じ入った。ヒットラーやナチスについては一般書も多種多様に出ているし、組織論だとか人間関係の研究にも応用されているのだと思うが、大量虐殺では同じなポルポトについてはどうも目に触れる機会がないな、と思っていたら、ほとんどが謎で、目に触れようのないことがこの本で分かった。これはやはりキリング・フィールドを借りてきてみないわけにはいくまい。ちなみにこの本の訳者あとがきでは「激動の20世紀は多くの革命家を生んだが、中でも謎に包まれたままの人物といえば、カンボジアのポル・ポトだろう。謎の度合いでは、2位の金正日朝鮮労働党書記をかなり引きはなしての…」とある。

当人の発表や書いたものは嘘だらけ。そもそもうんと後にならないとポル・ポトとは一体誰なのか分からなかったという隠れ革命家であり、その人物像に迫るのはとっても苦労したようだ。それにそもそもその人物像というのが「とらえどころがない」のである。そういう人物を、彼を知る大勢の人々からの聞き取りと、虐殺された人々が嘘の自白をさせられた供述調書やその他文献から描き出している。すごい力作。こういうマイナーな本を出版してくれた「めこん」には感謝。私の持っているもので2刷になっていた、良かった、なんて思ったりして。情報が隔離された中で自分達の世界の思い込みを根拠に事を起こすことの恐ろしさ。とにかくこんな者たちのおかげでなんで百万人を超す人々が殺されなくてはならないのか。それに、冷戦下の代理戦争というのは一段落したとしても、戦争や紛争の背後に大国の思惑があるのは今も同じで、そういう背後関係が細かく説明されている。そういうすべてが関連してポル・ポトという人はああなったのだし、ちょっとのズレがあればまた違っていたかもしれない。気になりながら放置していた本をやっと読めたことは良かった。知らないことだらけで今日も数冊アジア関係を買った。
Commented by eaglei at 2009-12-21 23:42
日本にも、不思議はいっぱいありますよ。
オウムに統一教会、ありゃ~なんだ~?
って感じです。
それに平気で嘘を言って、人を責めて自分に甘い、
鳩山首相の精神構造も、とってもとっても不思議です。

ポト・ポトに関しては、中国の「文化大革命」に関する歴史書を読めば理解が深まります。

映画「キリング・フィールド」は必見でしょう!
それと「すべては愛のために」も。
さらに、前に紹介したオリバーストーン監督の「サルバトル」もね。
Commented by kienlen at 2009-12-22 10:35
eagleiさん、いろいろと教えていただきありがとうございます。このポルポト伝だと、中国との関係はもちろんですが、どっちかというとベトナムが隣国なだけに比重を大きく描いていました。特に心理的な追い詰められ方が迫力。いろいろと読んだり見たり、それと行ってもみたいと思っています。また教えて下さい。
by kienlen | 2009-12-21 22:06 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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