非情城市

1989年の台湾映画が劇場で公開されているのを通りがかりに知った。仕事の終了時刻を予想して「ゼロの焦点」にするつもりで出たのだが「非情城市」を見ろという指示であるかのような丁度いい時刻に仕事が終わり、ご縁を感じてこっちへ。数年前に知人からDVDを借りてみたことがあったはず。しかし断片的な場面以外は曖昧で見直したいなと思っていた作品だった。3時間近い長編だが、ひじょうに素晴らしい映画だと思った。私的には大変好み。帰りがけに友人に電話して見るように勧めたくらい。ま、それにしてもつくずく歴史を知らないのである。申し訳ない思いで涙ながらにスクリーンに向かっていた。1945年の日本の敗戦の日から始まる。台湾の人々にとっては日本の統治からの解放ということになる。開放感に満ちた空気感でもなく、かといって困惑の空気でもない淡々と落ち着いた気配が、逆に状況に翻弄されてきた人々の背景を伝えているように感じられた。いきなり引き込まれるし、なんというか、山場があったり物語の波による変化で飽きないというのではなくて、ある社会状況下における日常生活そのものの厚みが表現されている、みたいな印象だった。

任侠なのか、地域の実力者的な家族員を中心に描かれている。この家族というのは、知りもしないのに私の中の台湾イメージそのものである。人情に厚く、弱みを握られないための筋を通すことが重要視され、何があっても飲食が大事で、賭け事と女の存在は欠かせず、そして女達の感情の表出方法に違和感がないのである。激し過ぎないが抑圧的でもない。全体のトーンもそう。色調も音楽も。で、内容であるが、日本が去り国民政府が入って来て、49年の中華人民共和国成立までの時期の悲劇。国というのは国民を殺す言い訳ならいくらでもあるし、言い訳作りの名人、というか名国なのであるから、そういう国家のお手本みたいなことをするのである。ここらあたりの説明不足気味、顔が見えない的なところがリアルである。きっとそういうことなんだ、と真に迫ってくる。そして外部要因によって家族も人間関係も容易に崩壊するし、人そのものも崩壊することが分かるわけだが、それでも留まれるところはあるというところが、それが何なのか、私はいつもそこが不思議になる。20年前の映画だけど、1度は見て損のないものと思う。2度見ても損はなかった。
Commented by 野うさぎ at 2009-12-22 23:07 x
10年前、台湾の友人を訪ねた際、80歳になるお父さんが国民党にあと30分で銃殺されそうになったと話してくれたことがありました。財布にいつも「昭和天皇の写真をもっている」といって見せてくれました。
台湾論では、丸川 哲史『台湾、ポストコロニアルの身体』がいいです。この映画の言語状況にも触れています。
Commented by kienlen at 2009-12-23 01:05
野うさぎさん、ありがとうございます。丸川哲史さんって読んだことありませんのでありがたい情報、参考にさせていただきます。台湾の人とはたまに接触があるのですが当方に知識がないので話が深まらないのが残念なところ。少しは知っておきたいものです。
by kienlen | 2009-12-16 21:41 | 映画類 | Comments(2)

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