福岡伸一『生物と無生物のあいだ』

あまりの素晴らしさにしばしば絶句して目を閉じた。まるで顕微鏡をのぞいて焦点を合わせたように分りやすい描写と文学的な香りのする美文。1行1行を大切に読みたくなる美文を見ると、やはりこれは本というメディア以外ないな、と、本の将来に期待したくなる。最後まで残るのはこういう、本の醍醐味を味わわせてくれるものじゃないだろうか。拍手と感謝。実は出版間もない頃に新聞かなんかで書評を見たことがある。その時に思ったことは「面白そうなタイトルだな。でも、そうか、難解で生物学の分野に知識のない者には読み通せないかも、だったらやめとくか」というもの。そのまま今に至っていた。先日友達が「これ、だぶって買っちゃった。読むならあげるよ」と言うので、大変ありがたくいただいた。そんな偶然がなければ読まなかったかもしれない、と思うと、すごく得したような、今まで損していたような。どうして難しそうだなんて感想を持ったんだろう。書評がどうだったのか覚えてないが、そんな印象を持たせるものだったとしたらちょっと責めたい感じがする。これは生物学の知識がなくたって読める感動的な本だと思います。

テーマは「生命とは何か」というもの。これを追及する形でご自身の研究生活と、研究の周辺、生物学の世界、その歴史、科学者達の世界、そして主人公である生命の世界が、時にはミステリー小説のようなスリルで、時には詩のように、時には私的エッセイのように、そしてもちろん全体が科学者の姿勢で進んでいく。図解はほんのわずか。それに何より煩雑な注釈なしで専門用語も引用も本文に組み込まれていて、一般書としての読みやすさを考えると、こういうスタイルはありがたい。興奮しちゃう面白さだったし、生命とは何かについて突き詰めていくまっすぐな姿勢も感動的。生きているって不思議だなと毎日思っているが、ますます不思議になるし、いとおしくもなる。素晴らしかったです。2年間で22刷りになっている。こういう本が売れるのもまた素晴らしいと思うし、いろいろな分野の科学者がこういう形で一般向けに伝えてくれたら、各種情報処理能力が高まるような気がする。内容、表現ともに感動しました。
Commented by jun at 2009-10-04 05:54 x
多くの形容で素晴らしいさと喜びが伝わってきてこちらまで嬉しくなりました。著者はきっといい先生なんでしょうね。
ダブって買って、それをプレゼントする友人もいいですね。
Commented by kienlen at 2009-10-04 09:54
多くの形容を知らず「素晴らしい」ばかり…でした。でもやっぱり素晴らしい。私もだぶって買ったのを友達にあげようと思ったら「そんなの要らない」と言われたことがあり、今も手元にあります。
Commented by wine at 2009-10-10 09:43 x
偶然ですが、私も3月に友人からもらって夢中で読みました。
堅い題名だったので、開くまで躊躇の期間がありましたが、読み始めると予想外の展開であっと言う間でした。
野口英世の研究が、「錯覚」か「データ捏造」か「自己欺瞞」だと確信をもって書いた冒頭導入部分は見事で、ウイルスの正体を解説していくくだりは、インフルエンザが蔓延している今時にぴったり。生物学者に留まらせるのはもったいない才能です。
Commented by kienlen at 2009-10-10 20:50
wineさん、お久しぶり。やっぱりそうですか。学者に留めておくのはもったいないと私も思いました。この人の別の本も読むつもりです。ただし、本か編み物かを選択せねばならない。冬は迷う。
by kienlen | 2009-10-03 19:56 | 読み物類 | Comments(4)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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