『司法通訳だけが知っている-日本の中国人社会』

この間図書館で借りた本は2冊に手をつけたが、いずれも挫折。3冊目のこれは挫折することなく読了。著者の森田靖郎さんのはこの手の関係で確か他にも読んだことがあったなと思って借りた。通訳をしている中国人が一人称で語っている聞き書きの本文の前後に著者の解説が入るという構成。「司法通訳だけが知っている」とタイトルにあるからには、守秘義務に配慮し工夫した上で犯罪を通じて日本の中国人社会を見る、というものかと予想していた。以前にも中国人の通訳当事者が書いたそういう本を読んだことがあった。でも予想とはかなり違った。それは多分、いろいろ配慮して脚色してあるのかもしれないけど、だったらこのタイトルでなくてもいいように思った。単に「通訳」とした方がしっくりくるように感じる。ついでに「日本の中国人社会」というのも、内容を反映しているようには思えない。私だったら『中国人通訳だから分かる-来日中国人からみえる中国と日本の闇』とか、ダメか…。

かといって面白くないわけではなくて、表面的には分からない研修生の中国側の事情なんかが細描されているのは興味深い。この通訳の方は正義感にあふれ、中国人のために中国まで渡り、とっても危ない目にあったりもする。私も実際に経験した人から「日本のヤ〇〇なんて目じゃない、中国はすごい」と聞いたことがあるが、こういう本を読むと、その怖さがどういうものか分かる。それはつまり家族とかそれに準ずる人達がすべてであるという開放性のなさが基盤にあって、これはもちろん両刃の剣である。時には心地良い、イザという時には頼りになる。しかしこれを利用する側にとっては、うさぎ小屋に獲物を追い込んだみたいなもんである。家族に危害が及ぶことを恐れて何でもせざるを得ない。それはまあ誰しもあることだが「何でも」のレベルがもう桁違いである。ああ、恐ろしい。ここではこのようにならざるを得ない背景として国家とか制度にも触れている。研修生問題、その背景にある日本の製造業の空洞化問題の説明はくどいような気がしたのと、文章が結構荒削りっぽかった。それが狙いなのかもしれないけど、よく分からなくて読み返した部分が何度もあった。サバイバル術としては有益な本と思った。
Commented by jun at 2009-09-13 22:00 x
kienlenさんのタイトルの方が、ここで読む限り内容が分かりやすいと私も思いました。いい編集者ですね。でもこの本は司法通訳という言葉にこだわったのでしょうか。
内容というか問題意識としては、闇社会は厳然とあり、でも闇のまま放置せず顕然化させる必要がある訳で、今度の政権、特に警察官僚上がりの静香ちゃんには少し期待しています。米国にも啖呵を切って驚かせたようですし。米国依存が対中や対韓関係も歪めていますよね。
個人的には先月、東京に行った時、悪名高い新大久保界隈の百人町に行って来ました。怖いので早朝に。先輩の大学講師からは大学の惨状と共に色々聞かされていますし。留学も不法就労の温床になり大学(短大)によっては半分近くが外国人で違法もしくは夜の仕事をしているそうです。ああ子どもを行かせるのに心配。まさに国際的なサバイバルを学ばせるにはいいか。私も一読しておきます。
Commented by kienlen at 2009-09-14 08:26
国際的なサバイバルという点では読む価値があるかもしれません。それだと読む価値のあるのがたくさんありますよ。それにしても、このような雑駁というか、内容を伝えるためという点での努力をかなり怠っている感想からjunさんが内容を想像する力がすごいなあといつもびっくりしてしまいます。
by kienlen | 2009-09-13 20:20 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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