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佐藤優『功利主義者の読書術』

雑誌を買いに書店に行く。どうしてもしばし店内散策。どうしても興味を惹かれるのを見つけてしまう。今回は純粋にタイトルから2冊だった。『功利主義者の読書術』とは素晴らしいタイトルではないだろうか。数多の社会科学理論の中で功利主義は概論だけではあるが、かなり魅力を感じたものだった。どんなかな、と思って手に取ったら著者が佐藤優だった。黒の装丁もスタイリッシュだし3拍子揃って買わないわけにもいかない。ちょうどどうしても読みたいと思うのが手元にないこともあった。小熊英二のは厚過ぎて外出先の空き時間に広げたい時にも就寝前にも昼寝前にも手に負えない。次に見つけたタイトルは『商人道のススメ』。これもいいなと思って高いけど買った。まず読書術の方を読む。まえがきから抜粋するとこういうことだそうだ。“プラグマティズム(実用主義)や功利主義の背後には目に見えない真理がある。読書を通じてその真理をつかむことができる人が、目に見えるこの世界で、知識を生かして成功することができるのである。この真理を神と言い換えてもいい。功利主義者の読書術とは、神が人間に何を呼びかけているかを知るための技法なのである”。

「資本主義の本質とは何か」「論戦に勝つテクニック」「実践的恋愛術を伝授してくれる本」「交渉の達人になるための参考書」「大不況時代を生き抜く智慧」「世直しの罠にはまらないために」「人間の本質を見抜くテクニック」「沖縄問題の本質を知るための参考書」「再び超大国化を目論むロシアの行方」「日本の閉塞状況を打破するための視点」という題目の元に、それぞれ2冊から4冊の本が紹介されている。自分で読んだことのある本は、若い時のチャンドラーとか数冊のみなので、読みたくなった本はたくさんあった。ちょうどこの本を発見した日の同じ店内で村上春樹が新訳した『ロング・グッドバイ』という、私が最も愛する本の中に入るのが平積みされていたのでちょっと開いてみた。新訳で読み直すのもいいかなと思って。でも、どうも私は村上春樹の文体の翻訳にスッと入ることができず元に戻したのだが、ちょうどこの本で清水訳と村上訳を比較して、村上訳をひじょうに高く評価していた。ちなみにこの本は「人間の本質を見抜く」に分類されていた。これを若い時に読んだのは効果あったんだろうか、などと思いながら読むのも楽しいし、いつものように丁寧な解説と、サービス精神にあふれる本で、これもお得感はあった。
by kienlen | 2009-08-21 09:57 | 読み物類 | Comments(0)

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