船戸与一『国家と犯罪』

古本のコーナーをブラブラしている時に見つけて買っておいた本。1997年発行。初出誌一覧を見ると、少々ひるむところはあるが、幸いなことに、そのあたりの判断ができるほど知識がなく、素直にひじょうに興味深く読んだ。面白かった。キューバ、メキシコ、中国、イタリア、中東のクルド人問題などを、あるエピソードを紹介することから始めて、そのエピソードの背景説明によって国内外の問題を浮き彫りにしていくもので、読み始めると止められない。取材も入っているけど、むしろ文献から再現しているボリュームの方が大きくて、その分主観や想像力が入るので、それがまた面白い。自分があまりに無知ということもあるが、当面この基礎知識があると、少しはチベットや新彊ウイグルで起きていることの判断材料になりそうだし、中東のニュースの部分理解にも役立つ。

結局のところ、暴力装置としての国家が前面に出ているもので、ちょっとうがった見方をしたら民族とか伝統回帰とか、そういう匂いもあるが、それも含めて面白かった。島国ニッポンにいると、作為的な国境線によって国民国家のメンバーとされる人々に思いを馳せることが難しい。さらにそこに政治、宗教、その他諸々が関わってくる。そしてマイノリティーの立場。これはなんだか、こちらの身も痛くなるほどだが、それでもやはり島国という特殊性に守られているとは思う。こうして守られていることが、この先にどういう意味を持つかは、また別の問題ではあるが。面白いと言っていられるような内容ではないが、最低限知っておくべき事柄が読みやすい形で伝わる本ではあると思う。古本だからお得感は3倍。ありがとうございました。
Commented by jun at 2009-08-07 08:46 x
境界線といえば、国家でなく家のお隣との堺のトラブルも、ほんとにもう人間の性かと思えます。国境とは違うけど堺を既成事実で追うのは同じか。領海の島もそうだし。小学校の時は、隣の子と机に線を引いたこともあったっけ。
古本はいいですね。私の場合は中でも、¥100の物しか買いません。でも有り難いことに、昔と違って本の価値ではなく、需要によって値段が決められるので、¥100でも宝の山ですね。みんなじゃないけど。
 昨日、広島での小学生のスピーチーは素晴らしかった。「核兵器は廃絶されるまでは、まだ戦争は終わっていません」という趣旨があって、思わず目が潤んだ。そうだ日本もまだ武器も作っている戦争中ともいえる。それに引き換えそのあとの方の心のこもっていないスピーチにはがっかり。選挙のお土産は歓迎だが、遅すぎる。
また今度は「唯一」を「ゆーいつ」と読んでいた。ここまでは振り仮名もなかったか。ああ、「ゆーうつ」
Commented by kienlen at 2009-08-07 16:39
この本を読んでいて、ここに核が絡んできたら本当に怖いと思いました。多分もうすでに危ない域に入っているとは思いますが。それにしてもよく降る雨ですね。
by kienlen | 2009-08-06 23:48 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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