『行きタイ、食べタイ、愛しタイ-わたしのタイ・タイ料理』

著者は童話作家で有名な立原えりかさん。確か何年も前に図書館でこの本を見たことは覚えているが、かといって読むほどのこともないなと思ってそのままにしていた。その本をまた図書館で見つけて、今はちょうどこの類が興味になっているので借りた。私がタイに住んだことがあるのは、偶然としかいいようがないので、タイ好き、タイ人好きという人に対しては、そこまで自信をもっていえないものだから、なんとなく引け目を感じる。ただし、タイ料理に関しては心底愛しているといえる、というよりも、タイ料理があったからタイにズルズルと住み続けてしまったのかもしれない。しかしここでも問題は、かといって自分で作ったりはしないことである。言い訳としてはタイ人が、それも料理の上手なタイ人が身近にいるから、ということになるが、つまり結局料理に関しても引け目は感じている。はあ、半端であるな。興味に関してとことん突き詰めるタイプだったら人生違っていただろうし、子どもも違っていただろう。

言い訳はともかく、この本の発行は私が帰国した1996年である。ということは、内容が、ちょうど私がバンコクに住んでいた頃のことということになる。ただし著者の方がタイとの関わりはだんぜん長くて多様性にも富んでいる。あの頃は良かった、という郷愁は外側の人間の特権なのかもしれない。しかしこういう同志、じゃない同時代を共有した人が、それそれ、と自分が感じることを代筆してくれていると感動してしまう。ああ、自分ひとりではない、という感じで。料理の本で写真ひとつなく、ひたすら文章のみで、それでも読ませてしまうというのはさすがに作家ならでは。自分の来し方を振り返りながらタイとタイ人とタイ料理と、タイと関わる日本人も含めてのエッセイと、タイ料理の写真なし、イラストほんの少々のレシピ。私もここまで身近にタイ人がいなかったら、もっと堂々とタイ好き人間になっていたかもしれない。そしたらもっと無邪気に語れたかもしれない。他のことでは距離を取れるタイプと思っていたが、これもご縁なんだろう。タイ関係の本は大量にあって、エッセイも多いが、全部とは言わずとも大勢においてここまで共感を得たのは珍しいような気がする。回りくどい感想であった。
by kienlen | 2009-07-15 22:19 | 読み物類 | Comments(0)

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