『新・武器としてのことば-日本の「言語戦略」を考える』

少し前に読んだ。著者は言語社会学の鈴木孝夫先生。図書館なのでタイトルと著者だけで借りたものだが、大変良かった。分りやすい事例を示して、それがどういうことかについて本質の部分まで連れて行ってくれる。冒頭からあがっている例が、国連の人事をめぐる攻防などにおいて、日本の情報収集能力や判断の甘さが続いて負けを期していること。それが何に起因して、どうしたらいいのかを提示している。外枠の主張というのは、平和主義を貫くためにはあらゆる手段を講じるべきであり、手段を尽くしてから再武装という選択を考えるべきなのに、努力しているようには見えない、ということだろうと思う。あらゆる手段の中のひとつが言語戦略で、具体的には国連の公用語に日本語を入れる。隣国との間に渡航困難な海が横たわる島国という日本の特殊な地理的条件から、常に自分たちの国や言語が消滅する不安を抱えてきたほとんどの国々とは違う外国観を日本人は描くことができるし-すなわち理想化-良いとこ取りができる。

で、どういうことになるかというと、外国の良い所だけ取り入れていれば事は収まり、自ら戦略的に発信していかなければ国が危うくなるという危機感を持たなくていいから、発信力に劣ってしまう。言語に関してもしかりで、理系の学問用語は別にして人文科学は単語を対にして訳せるという単純なものではないことも、受信だけしていると気付きにくい。言葉の背景にある宗教や思想が異なるということは知っておくべき。明治期に英語一辺倒の政策をとったことは今日の繁栄を見れば成功であったことは認めつつも、グローバル化の中で、英語圏の視点からのみ世界を見ることも限界であり危険である。そもそも小国主義でいくなら話は別だが、大国になっているわけなので、日本の動向が世界情勢を変えるほどの影響力をもつのだから、それを意識したふるまいが必要であろう、と、そんな内容であると思う。同感しながら読ませていただいた。常々思うけど、このくらいの基礎的な内容を学校教育に横断的に入れることはできないんだろうか。すごくまっとうな主張に感じられたけど、ただ最後に、今回の本が以前の本の「新」版であることを説明して、発行の理由を「私のような考えを具体的に表明している論者は私の知る限り日本では皆無であるため…」とあって、そうなんですか…とびっくりした。
Commented by jun at 2009-07-04 08:48 x
言語が戦略的とはその通りなのですね。10年以上前、米国では「intel」なども国家の戦略物質であると聞いて驚いたことがあります。日本では、はからずもアニメなどは戦略物質でしょうか。俳句や川柳も。これも以前書いたかな? 最近、物忘れが激しいです。
でも、いい本と考える機会を頂き有難うございました。

 近作回文

 「カッコイイ好い国家」   かっこいいいいこっか
 「かつぶし(鰹節)を私物化」  かつぶしをしぶつか
 
失礼しました。
Commented by kienlen at 2009-07-06 23:52
感想を書く本がたまるばかりで書くのが追いつきません。これって現実逃避です。回文という産物もないし、ちょっと元気なくてすみません。
by kienlen | 2009-07-02 08:35 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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