野中健一『虫食む人々の暮らし』

3日もあいた。家にいる時間があまりなかった。昼はいろいろで夜遊びは毎日で。昨日は電車に数時間乗っていたので、読みかけだったこの本を読了。図書館で借りた本だが、大変面白かったし、参考書になりそうなので購入も検討中。世界各地の虫を食べる人々の様子を描いた本。友達の中には虫食に興味を持つ人がいて、前にもタイの虫食料理の講習会みたいなのを頼まれたこともあった。しかし私自身が特別興味があるわけではない、と思っていた、この本を読むまでは。しかし読んでいるうちにあまりの面白さに感動の涙を流してしまったのは、自分にも虫食にまつわる思い出があるからだろうという事に気付いた。ネリを棒の先につけて足長蜂の巣をくっつけて取り、蜂の巣の個室の蓋を慎重に開ける時のワクワクははっきり覚えている。まとわりつくようなあの巣の感触も好きだったし、蜂の子の頭をつまんで傷つけずに引き出すのが面白かった。失敗すると頭が千切れてしまう。幼虫にならずに小さな卵のまま干からびているのも結構あったし、羽がはえて飛び出しそうなのに当るとキャッという感じて手を引っ込めた。それを炒って食べたり、時には生で飲み込んだり。ああ、楽しかったなあ、という自分の思い出は、まさにこの本のテーマであるようだ。

虫食を科学的にどうの、とか、虫についてのマニアックな話ではなくて、虫食文化、虫と人間をつなぐ虫食という文化に思いを馳せる本だった。でも、自分のささいな思い出などは片隅においておくとして、この本を読みたくなった最大の理由は夫の虫好きによる。もともと好きだったし、バンコクでも食べられるものは食べていたが、郷愁なのか歳をとって子どもの頃の食への原点回帰か、あるいは単に虫を食べた季節なのか、このところとみに虫を食べたがる。旅行中に「虫買ってきてくれ」電話にも驚いたが、店に行くとどんぶりいっぱいの虫がカウンターにあることも少なくない。入荷すると買っているのかどうか。しかもおかしいのは、賄い料理は「これはタイ料理好きだと気に入るから紹介してみれば」と言うのに関心薄く、カメムシとかアリなどはどんぶりを差し出して「どうぞ」と勧めたりしている。虫好きは感動するが、そんな人はめったにいない。でも、まあ、この本にもあるように、虫について語ったり共有したくなるのが虫食のひとつの特徴でもあるようだ。分らないでもない。たまたま娘がアリも蜂の子もイナゴも好きなので、虫で盛り上がることはある。やはりタイ東北地方及び同じ文化圏のラオスの虫食は世界的にも多彩であるようで、この本でも多くのページをさいている。著者の愛情と情熱を感じる素敵な本だった。写真はタイでは最も一般的な食用虫のメンダー(タガメ)。常連のお客さんのリクエストで仕入れたもの。タイでも高価だが、日本ではもっと。
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Commented by eaglei at 2009-06-27 19:41
バンコクで宿泊したホテルの近くでは、屋台でいろいろと売ってましたっけ~。
ほとんどが佃煮化していたような気がします。
怖くて、食べませんでしたけどね^^

それにしてもタガメって、ゴキブリが水生化したものですよね。
それを食べるなんてビックリです。
きゃあ~~。
Commented by jun at 2009-06-28 10:05 x
新聞などの広告で気になるタイトルでしたが、私はまだ読んではいないので、紹介いただきよかったです。
虫も慣れですかねえ。人間は本能として基本的に駄目なのか、文化的獲得なのか。クワガタと遊ぶのはOKで、虫ではないがカニはOKなのは不思議。
足長バチに関しては、私もkielenさんの詳細な描写と全く同じ体験を持ちます。確かに盛り上がりそう。
 私の方は、滝沢克己の「中学生の孫への手紙  人生の難問の答えて」という冊子を今日贈られる。氏は戦後の九大のカリスマ的な先生で、それ以上の形容詞を付けにくいです。2001年に長女が編集しています。すみません宣伝みたいで。大げさに言えば、私も孫弟子として学ばねば。
また、今日は午後、Nさんと「ハゲタカ」を見に行く予定です。
Commented by kienlen at 2009-06-28 19:51
eagleiさん、junさん、コメントありがとうございます。虫は好きな夫にしたら、刺身は危険だしとんでもない食べ物で今も食べません。食は文化でしょう。それに人間に近いものの方が共通のウイルス感染のリスクが高いと、動物の研究している友人と話したばかり。昆虫食って理に適っているみたいですよ。ただ大量に食べるわけじゃないから、あくまで嗜好品、子どもの美味しいオモチャでおやつ。私は虫好きじゃないですが、動物を食べるよりも野蛮じゃないし、愛すべき味覚だと思いますね。
by kienlen | 2009-06-27 08:03 | 読み物類 | Comments(3)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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