出来レース鑑賞のツボ
2009年 06月 20日
講演を聞く機会は比較的多い方だと思う。個人的趣味で行くこともあるが、仕事がらみもある。昨日は後者で新幹線を乗り継いで遠くまで行った。男女共同参画を推進する自治体の部署の主催で「ワークライフバランス」についての話だった。長々しい名前を略すとWLB。こういう概念が生れた経緯はともかく、日本の政府の男女共同参画推進の重心はジェンダーよりもこっちに移っている。ライフの中にワークがあるのに、ワークとライフのバランスとはヘンなネーミングだなあというのが初めてこの言葉を知った時の印象だったが、これに関する講演やらシンポやらを何度か聞いても、その違和感を拭えずにいる。新しい概念を普及させること、つまり啓発活動は行政機関の重要な役割である。相反する概念が出てきても、それが自分の信念に反してもキチンと執行するのが公務員の役目である。逆に言うと、自分の信念なんか持ったら公務員はやってられないんだろうな、ごくろうさんというか、公式な無責任っていいなあというか…。そういう空気に満ち満ちた会場で、おとなしく講演を聞く優等生市民をやってきた昨日だったが、税金の関係者内還流ですかと感じてすっかり疲労した長旅だった。
大学の教員から管理職として社会的な地位を上昇させつつ、プライベートには、結婚して子供を育てて、伝統を重んじる舅、姑のいる旧家の嫁として、社会的地位の高い夫の妻として、地域社会の一員としての振る舞いも心得、母親として毎食手作り、弁当持参を貫き通し退職したばかりの女性が講演者だった。斎藤美奈子が、紅一点に関する秀逸な考察をしているが、まさにそれを体現してきた方である。本質を追求し過ぎないことは、社会の本流に乗るコツだと思うが、特にこの年代の女性にあっては、それが男性社会から高い好感度で迎えられることになるに違いない。それをよく感じるお話で、ある意味面白かったが、今さらこの面白さを楽しんで何になるんだよ、であるし、これを男女共同参画推進の講演でやるとはね、なのである。いや、講演者自身がちょっと視点を移して、そのへんに自己言及してくれると、そこから現代も映るし、文化資本や資源をソンすることなく社会還元することになるし、話は断然面白くなるはずなのだが、なぜそれをしないかがとっても不思議だったのだ。でもまあ、そんなことしていたら、そもそもこういう講演にひっぱりだこにはならないんだろう、という気はするが。行政の啓発活動は関係者の出来レースで、納税者は観客としてそれを楽しんで拍手するってことか。こういう意味の平和をむさぼっていていいのだろうか、島国ニッポン。
大学の教員から管理職として社会的な地位を上昇させつつ、プライベートには、結婚して子供を育てて、伝統を重んじる舅、姑のいる旧家の嫁として、社会的地位の高い夫の妻として、地域社会の一員としての振る舞いも心得、母親として毎食手作り、弁当持参を貫き通し退職したばかりの女性が講演者だった。斎藤美奈子が、紅一点に関する秀逸な考察をしているが、まさにそれを体現してきた方である。本質を追求し過ぎないことは、社会の本流に乗るコツだと思うが、特にこの年代の女性にあっては、それが男性社会から高い好感度で迎えられることになるに違いない。それをよく感じるお話で、ある意味面白かったが、今さらこの面白さを楽しんで何になるんだよ、であるし、これを男女共同参画推進の講演でやるとはね、なのである。いや、講演者自身がちょっと視点を移して、そのへんに自己言及してくれると、そこから現代も映るし、文化資本や資源をソンすることなく社会還元することになるし、話は断然面白くなるはずなのだが、なぜそれをしないかがとっても不思議だったのだ。でもまあ、そんなことしていたら、そもそもこういう講演にひっぱりだこにはならないんだろう、という気はするが。行政の啓発活動は関係者の出来レースで、納税者は観客としてそれを楽しんで拍手するってことか。こういう意味の平和をむさぼっていていいのだろうか、島国ニッポン。
by kienlen
| 2009-06-20 12:10
| 社会的話題
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