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飯山雅史『アメリカの宗教右派』

何かの書評で見つけた本だったと思う。興味を惹かれて買っておいたのが眠っていて、暇になった昨日読み始めたらひじょうに面白かった。中公新書ラクレはお得感あり。帯には「草の根保守主義、その実像をとらえる。大統領選を左右してきたもの」とある。政治のダイナミズムをどういう観点から見るかで、それぞれに面白いと思うけど、これはタイトル通りに「宗教右派」の影響力という面からアメリカ政治というか、選挙を描いているもの。ただ宗教右派って言われても何だ、という私のような者にも分りやすく解説するところから始まっているのは新書のお役目通りというところでありがたい。そもそもアメリカにおける保守とリベラルが何かというのもこの本の解説はとっても丁寧だ。つまり、保守の主張の基本が政府への不信感にあるから、問題は政府そのものであり当然小さな政府を良しとする。対してリベラルは、政府が国民のためにできることは多いからすべき、というもの。アメリカの誕生の経緯をみるとこういうことになるわけで、言われてみるとなるほどなのだが、そもそも日本なんかと全然違うわけで、表面をまねたっておかしくなるに決っているじゃないかとの思い強まる。ま、そんなことはこの本の主題とは関係ないんだけど。

宗教が分らず世界情勢も国際関係も何も分らないのは常識とはいえ、どうやって宗教を知ったらいいのかというのは、宗教から意識的に遠ざけられてきた多くの日本人にはなかなか見当がつきにくいのじゃないだろうか。少なくとも私はもう全然。それで世界宗教地図とか宗教社会学とかなんとか、思いつくと読もうと試みたりもするが、なかなか分りにくい。その点この本だと、政教分離を徹底しているというわけではないアメリカで、政治との関連で論じることに主眼を置いているので、思想そのものに深遠に複雑に踏み込む必要性が避けられていて、おかげでとっても分りやすくアメリカにおけるキリスト教内の力関係とか影響力が浮き彫りになる。これは多分アメリカについての基礎知識の範疇なんだろうと思うが、基礎知識だからといって黙っていればどっかから与えてもらえるわけではないし、読んでおく価値はあるように思った。昨年の大統領選実施の前の発行であるが、両党の候補者は揃っている段階だから、つい最近までの動きを知ることができる。とっても面白かったです。これで760円+税はお得でしょう。
Commented by eaglei at 2009-06-11 05:34
おはようございます kienlenさん
またまた、面白そうな本を読まれていますね。
僕も読みたいです。

アメリカのキリスト教右派については、興味が尽きません。
絶版になっていますが、お薦めの本があります。
「核戦争を待望する人びと」(朝日選書)というものです。
アマゾンの中古本で買えますよ。

その本に関して、記事も書きました。
http://eagleai.exblog.jp/2650881

Commented by kienlen at 2009-06-11 21:45
eagleiさん、こんばんわ。読まれたらぜひ感想をアップして下さい。訪問していますので。それと本の紹介ありがとうございます。タイトルでちょっと怖気づいてしまいますがチェックしてみますね。
by kienlen | 2009-06-09 16:30 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたりタイに住んだり戻ったり旅したり


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