タイ人死亡の事件に思う

昨夜は店番の日だったので店に向かって歩いていたら夫から電話があった。「記者が来ているんだけど」と言うから、てっきり通訳して欲しいとか、私を訪ねてきているのかと思って「あと5分で着くから待ってて」と答えたのだが彼の目的は違った。「事件のことを聞かれたけど、タイ人がいる前で答えるのはまずい」と言う。「取材を拒否する権利はあるんだから嫌なら断ればいいでしょう」と言うと「だから『何かあったら電話してくれ』と言って帰ってもらった」ということだった。店に着くとタイ人が数人集まって事件の噂話をしていた。彼女達が帰った後に取材の記者が何度か来たり、電話があったりした。私は被害者も加害者も知らないわけだし、被害者の女性の方はこの町に来て間もないので、タイ人でも詳しく知っている人はいないようだった。ただ、周囲に「死にたい」と漏らしていたり、金がなかったり、男性に殴られて顔を腫らしていることがあったということだった。最初に事件を知った時は、買春相手を殺したのかと思って全くひどい話だと思ったが、そうではなくてパートナーである。そしてどうも聞いていると典型的なDV、共依存のように感じられる。両方が死んでしまっているし、想像でしかないが。

男性は女性を殺した後に飛び降り自殺したそうだから、心中のようにもみえる。社会の底辺の者同士の事件を取材する記者の方々も、そんなに熱心そうには見えなかった。だいたい自殺が年間3万人を越えているという稀有な先進国であるから珍しくないのかもしれない。これはあくまで一般論だけど、言葉もろくに通じない相手との結婚生活を日本で送る。経済的に安定しているわけでもない。日本の親族が冷たい例はとっても多い。故郷の家族への義務は送金から何からいろいろあるが、一部例外を除いて日本人夫に頼めないし、そもそもタイ人女性の滞日目的は働いて稼ぐことだから、歓楽街のホテルの清掃を安い時給でやるのが嫌だったら、どうしたって風俗関係の店である。それだって一時のようにガンガン儲かるわけがない。そしていつの間にか10年を超えて20年近くになる。来日時は若くたって歳だ。一体何を築いてきたのだろうと思いつめたら落ち込む一方だろう。せめて故郷に家を新築したとか車を買ったとかの成果があればマシだが、みんながみんなできるわけじゃない。追い詰められるのは分る気がする。日本社会で起っていることだが、なかったことにして済んでいる。それがたまにこうして頭を持ち上げる。何か訴えるように。そんな気がする。
by kienlen | 2009-06-03 11:31 | タイ人・外国人 | Comments(0)

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