フロスト×ニクソン

本と映画の話ばかりでバーチャルな世界に逃げ込んでいるようでもあるが、実際にはそういうことはなくて、今日も生々しい目にもあったし、昨日もそうだし、その前もそうだった。だからこの映画はもう間に合わないと諦めていたのだが、直前の仕事に比較的時間的余裕があったのとコントロール可能な状況に持ち込めたのでギリギリ間に合って見ることができた。面白かった。しかも偶然、今日のランチに友人と「認められたい欲求」というものについて話していたのと重なって一層楽しめた。小さな会社を経営するその友人によると、企業経営者というのは案外認められたい欲求の強い人が多いそうだし、そのへんにもたくさんいるようだ。認められたい願望のない人なんていないと思うが、つまりはどこらへんまでならヘルシーかということであるが。それで映画だが、ニクソン大統領とインタビュアーの対決である。つくずく自分の無知を感じ入っている場合ではないものの、ウオーターゲート事件の時は私はもう子供ではなかったはずなのに、おぼろげにしか知らない。あの頃、何していたんだ、自分。恥ずかしい。

とはいえ、実のところ、面白いとして片付けておかないと頭にくるわけだ、政治関係というのは。認められたい欲求のためになんで国民が犠牲になるんだよ、と怒りが沸くが、それと対決できるのも強烈な認められたい欲求の持ち主じゃないとダメってところが、まあ人の世界なんてこんなもんであるぞって感じで面白かった。正義がどうの、公平さがどうの、国民のためがどうのはくそ食らえである、という潔さは案外正直だし、そういう迷路に入りそうなものは排除する方が面白い。そうだ、この映画は、複雑な事柄を単純化するというテレビというものの特性が重要なテーマになっているから、迷路の入り口のドアは閉めておくのがいいわけだ。ううむ、これが逆説であればいいが、そうじゃなくなっているというところは、まあちょっと怖いような気がする。というわけで、泣きもせず笑いもせずに、恐怖も虚無も人情味も感じず、すなわち諸々の感情の起伏ほぼ皆無でここまで楽しいというのは素晴らしい。で、ここでいきなり感情面を前面に出した個人的評価として、好みからいくと、大好きなタイプの映画だった。無理していった甲斐はあったな。
by kienlen | 2009-05-29 19:50 | 映画類 | Comments(0)

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