ラオスからタイに戻るバスの中でその1

ラオスのビエンチャンからタイのウドンタニーまでの国際バスは、他のバスと同様に座席指定である。隣には黒いズボンとジャンバーで体格のいいタイ人女性が座った。タイ人には珍しく、なんだか暗い雰囲気である。走り始めてじきにひとつ前の席の、まだとっても小さな赤ん坊が激しい勢いで泣き出した。抱っこしている母親らしき女性が揺すったりするがまったくダメ。どう見ても貧しそうな外見。こんな小さな赤ちゃんを抱っこして1人でこんなバスに乗るなんて、自分の子育て期を思い出すと涙が出る思いである。その時に隣の女性が「あの人はね、ラオスで買い物してきてタイで売るのよ」と独り言のようにぼそっとつぶやいた。何だ、知り合いなのか、それにしては他人を装っているな、事情でもあるんだろうか、なんか怪しい雰囲気、などと思いつつもそんなことは言わずに「でもラオスの方が物価が高いじゃないですか」と言った。すると動じる様子もなく「安いものは安い。布とかね。日常品はタイからラオスに運んで両方で売るの」と言う。的を得たもの言いである。それにしても仲間だったらもっと当事者意識をもって話すだろうに、何か変だ。それで「お仲間ですか」と聞いてみたら「そうじゃないけど、だいたい格好を見れば何をしている人か分かるの」と言う。つまり私の疑問は見抜かれていたというわけだ。「ラオスには観光ですか」と、とてもツーリストには見えないが一応聞いてみると「ちょっと知り合いを訪ねた」ということだった。
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それから話すようになった。以前にアメリカ人のメアリーという学者がラオスの染色を視察したいというので連れてきたことがあると言う。「そういえば草木染めの布がたくさんありましたね」と言うとラオスは森がたくさんあるから草木染めには向いている。タイは規制が厳しくなっていて木をいじれないが、ラオスだと傷をつけることもできるからとも。木の名前も挙げるがとても覚えられない。しかし草木染めって自分には草のイメージばかりなので「草だったら自然を破壊しないのになんで木なんですか」と聞いたら「草なんて量がちょっとでしょ」と笑われた。そんなこんなで打ち解けたのか「実は、ラオスにはお手伝いさんの件で行ったの」と言う。ということはブローカーか、そういう雰囲気が匂うぞ。タイ人に不人気の職業にはミャンマー人が多いというのはとっくに起こっている現象で、ラオス人に目をつけても不思議ではない。「お仕事は?」と聞けばいいのに、聞く勇気がでない。すると日本にも行ったことがあるという。ますます怪しい。しかし文化交流だという。えー。結局彼女は小学校の先生だった。「日本に行った時はコウチョウセンセイと言われた」と、そこだけ日本語になった。高齢出産で2人目の子を産んだのが40歳過ぎ。仕事は忙しいし体力は落ちているし、子守を雇わないことにはどうにもならずラオス人を紹介してもらって雇い、ビザの更新で故郷まで連れて行ったそうだ。それから堰を切ったようにラオスの悪口が始まった。
by kienlen | 2009-04-18 22:46 | 地域 | Comments(0)

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