「ラースと、その彼女」を見た

本と酒と映画の日々、ついでに今日も思い立って「ラースと、その彼女」を見に行った。午前中にリンゴを持って立ち寄ってくれた友人としばらくおしゃべりしていたところ、その友人がこの映画を見たいと言い出して、そういえば新聞かなんかで紹介を読んだ時に、面白そうだと感じたことを思い出した。時間をチェックしたら娘が塾に行っている間に見れる便利な時間帯であることが判明して、娘に夕食を食べさせて送り出してすぐに出かけた。いずれにしろ友人の訪問がなかったら確実に見逃していたものである。知っていたのは男性が人形を恋人のようにして一緒に暮らすお話、という程度。他は何も知らない。田舎町のもやのかかったような朝のシーンの始まりと、ゆっくりで分かりやすい英語とテンポと役者の容姿から、これはイギリス映画なのだろうか、と思ってしまったがアメリカ映画だった。つまりもともとから全然英米の見分けがついてないってことなのだが。何しろ仕事が何もないので暇だから行ったというのが一番の理由…なんて言っては申し訳ないくらいのアタリだった。面白かったし、上質な感じの映画だった。共同体と家族の復権を訴えているのかと思われるようなところは、なんとなく、今の時代の狙い目なのか、なんてうがった見方をしたらつまんないな、とは思ったけど。

などとひねくれた考えは頭の中であって、素直に言うと、共同体や家族の温かさへの希求というのは、1人では生きられない人間にとっての基本的欲求であると思って感動的であった。母屋に出産を控えた兄夫婦が住んで、ガレージで1人暮らしをしているのが弟であることがじきに分かる。田舎町では教会が人々の交流の場になっていることも分かる。閉鎖的な共同体のうっとうしさと優しさが、国や文化を超えて普遍的であることも分かる。で、この弟が孤独であることを心配する兄夫婦は執拗に食事に誘うのだが、弟は乗り気でない。放っておいてくれという態度。こういう時に自分が感情移入できるのは弟の方であるのが寂しい。小さな会社らしい職場でも同僚とのコミュニケーションには消極的。かといってひねくれているとかではないし、暴力的ではないし、暴力を内に秘めているのでもないし、心優しい好青年として人気はあるのだ。いかにもいそうな現代青年タイプ。こういう人がアメリカ映画の主人公であるのはほっとする。その主人公がある日突然おしゃれして兄夫婦の家に告白に行くのである。女性が来たと。躍り上がって大喜びする兄夫婦が、その女性がお人形だと知った時の表情がよろしい。その後は職場、共同体、家族の冷めた優しさがこの男をこちら側の世界に結果的に引き戻していく、というような展開。一歩間違うと、ハイハイ結局それね、とシラケそうなお話が、そうならずに最後まで楽しませてくれる。面白かった!
Commented by jun at 2009-02-24 12:30 x
面白そうな映画ですね。kienlenさんの詳細な描写に引き込まれながらも、見る時の楽しみの為に途中からスキップして読みました。
また、今の時期、冷蔵保存された林檎を貰うとうれしいですね。私も昨日貰いました。
「国境おかまいなし」もとても面白く読みました。ありがとうございました。メキシコの生の活力や情熱、活字にしにくい話題、西部邁論なども特に面白かったです。
私も第二外国語でスペイン語を習ったんだけどな。
天下のコロンビア大学の先生でもニューヨークでは狭くて暗くて危険なアパートをあてがわれることに苦学する意義と勇気を見出す思いです。
ではまた。
ではまた。
Commented by kienlen at 2009-02-25 18:12
これはお勧めですよ。最近みたいなって映画が多いので暇にまかせて通ってます。今日の分はポイントたまっていてタダになりました。junさんのところは遠いから大変ですね。
by kienlen | 2009-02-23 22:39 | 映画類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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