中俣暁生『<ことば>の仕事』

書店で見つけてタイトルと装丁に惹かれて手に取ったら、言葉の仕事をする人達へのインタビュー集で、いきなり出てきたのが小熊英二だった。恩田睦もいる。面白そうだなあと思ったが、税別で1900円もする。ソフトカバーで特別厚い本でもない。かなり迷って棚に戻したように思っていたが、家に積んであったから買ったのだ、ええい、これもご縁である、というわけで昨夜読んだ。1960年代前半生まれの9人へのインタビューである。インタビュアーである著者もインタビューされる人達と同世代。写真は大野純一さんという、やはりほとんど同世代。小熊英二と恩田睦は読んだことがあるが、他の人達は、名前は聞いたことがあるなあ、読んだことはあるかなあ、ないなあ、あっても雑誌でちょっとだろうな、という程度にしか知らない。実は私が、いいなあと感じる人にはこの世代の人が結構多い。ひとつには自分とそんなに離れていないからメディア状況など似たような時代の空気を吸ってきたということが大きいと思う。それとシャイというか、謙虚さを感じる。それはつまり、こうあるべき、と他人に押し付けることよりも自分への関心の方が高いからではないだろうか、という気がする。で、なんとなくであるが、その下の世代になるとまた逆転するような気が、あくまでなんとなくしている。

ここでは仕事に関してだけを聞いているので、多方面から迫ってその人物を浮き彫りにする、なんていう趣旨ではないのだが、9人まとまると何か共通点を感じたりしてそれなりに面白く読んだ。もともとが2003年から04年にかけての雑誌の「共有地の開拓者たち」という連続企画の人物インタビューということで、そういう趣旨の元に聞いているのだから当然か。新しいメディアが出てきた時代、豊かさが定着した時代に学生だったり社会人になったりした時代の人達ということになる。そしてやはり東京である。雇用が今日のように流動化する前でもある。経済発展をしていた時代だ。だから個人の能力が高いと、なおさらに公共性も持てるのだと思う。そういうところを、同じ仲間という意識のある著者が引き出そうとしている感じ。なんだか、もっと上とかもっと下の世代からは羨ましがられるかも、なんて思ったりもするが、闘争的じゃない、共存的であるというのは私にとってはほっとできるから、こういう人達がいなくならないで欲しいなと思いながら軽く楽しく読んだ。仕事の仕方が多くの人にとってモデルになるかというと、それはちょっと難しそうだなって感じたけど、別問題だし。
by kienlen | 2009-02-23 12:42 | 読み物類 | Comments(0)

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