足立倫行『悪党の金言』

これは帯がなかったら目につかなかった本だなあ。集英社新書だから装丁で差別化はできない。帯がちょっとイカしているというかイカれているというか、「悪党」の名の元に森達也と保阪正康と佐藤優と田中森一と重松清の写真が並んでいる。で、問題は、これ、全員私の好きな面々で、となると、なんでこんなまっとうな人達が悪党呼ばわりされるんだよ、と不信に思って、それで惹句を見ると「世の正統に意義申し立てる者-悪党」ってことで、おお、と納得させる流れになっている。その流れにのって購入して即読。今年早々に廃刊になった「PLAYBOY日本版」の目玉だったインタビューから足立さん担当分をセレクションしたものだそうだ。帯に写真が載っている人以外にインタビューされているのは、内田樹、島田裕巳、溝口敦で総勢8人。全員が何かしら読んだことのある人で、大方が大好きな人に入るわけだから最初から楽しみで、最後までとっても面白く読んだ。プレイボーイのインタビューが面白いという評判自体は聞いたことがあったけど、この雑誌は昔、若い頃にたまに読んでいただけで最近は、確かボブ・ディランかなんかのインタビューの時に何かのはずみで買ったきりで全然読んでない。雑誌の廃刊は続いているけど、考えてみると読みたいページというのは限られているので、雑誌感覚で新書でタイムリーに出して下さってもいいなあとこの本を読んで思った。

インタビュアーもいいしされる側もいいし、だから全体にとってもいい感じだった。乱暴なところがないし、へんな挑発もないし、信頼関係を元に胸襟を開いていくって感じが好感だった。みんな表現する人達だから、つまりもう自分を対象化できちゃっているわけだし覚悟も決まっているし、だから「これはオフレコで」なんてことにならないんだろうし、基本線をごまかさない人生を歩んでいる人のは気持ちがいい。その点が政治家なんかと違うところで、私はどっちかというと、この本でいうところの悪党の皆さんが好きな、単純にすぎる人間なのかもしれない。トップの保阪さんのも泣けたが、溝口さんのインタビューから浮かび上がる人間像はとっても魅力的だった。この人は私が経済事情からたった2冊だけ定期購読している雑誌のひとつで見かける人だけど、まとまって読んだことはないから今度は読んでみようかなって気になった。当人が自分のことに著書で言及するのと、こうしてインタビューに答えるのとではまた違って、どっちも面白い。ほっとする1冊。落ち込んだ時に読むのにいいかも、と思った。こういう本で気分を清々しくできるというのも便利な性格かも。なんか、感謝したい本でした。
Commented by jun at 2009-02-08 11:15 x
kienlenさんのこの一文も、全部「フムフム,ああそうか」と,いい感じで読め、私も清々しくなりました。信頼関係っていいですね。
まっとうな人たちの異種の「魅力」を、「悪党」という言葉で表現することって、たまにありますもんね。
Commented by kienlen at 2009-02-08 20:17
そんな風に感じていただけるとは嬉しいことです。翌日の県主催のイベントで清々しさが吹っ飛んでしまったのが惜しかった。
by kienlen | 2009-02-07 16:54 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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