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『外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か』

こういう事を知りたかった!と思う内容の本だった。岩波新書はあんまり読みたいのがないこの頃で久々の満足感。著者は白井恭弘先生という方。言語学と言語習得論が専門の先生だそうだ。外国語上達法とか記憶力アップとかのハウツーものは読む気になれない。ハウツーものなんて実行しなかったら意味ないわけで、自分が実行しないことは明白だからというだけの理由ではなくて、その類は何らかの理論に依拠しているわけだから、依拠している論が自分に合わなかったら、もう最初からミスマッチなわけだ。で、この本は帯に「効果的な学び方は本当にある?」と疑問符付きで書いてある通り、△をすれば○になる、という単純な話をしているわけではなくて、第二外国語の習得とは何か、から始まって、「臨界期説」などのよく聞く理論も、調査や実験の結果を紹介しながら反証も紹介して、著者なりの考えも加えて、とっても行き届いた内容になっている。大変面白く読んだ。

私が英語を嫌いになったのは高校の時だった。中学では英語のテストで困ったことはないし、そういう自分が英語のテストができなくなるなんてあんまり考えなかったのに、高校でメチャクチャになった。きちんと教科書を勉強してないとできないようなテストだった。だから私のようにキチンと勉強しない者は振り落とされるわけだ。それでも外国語そのものを嫌いにはなれず、後に高校の英語教師に道でばったり会った時に「英語を勉強したいので教えてくれないか」と頼んだことがある。その時の教師の奇妙な答えは忘れられない。確か、ゴネンネ、もっと別の方法で教えてあげたかったのにね、みたいな内容だった。当方のお願いの答えにはなってない。この本を読んでいると日本の学校英語の特徴も分かるし、弊害も利点も併記している。つまり、どうしたらいいという安易な答えなんかないわけで、それでもこの言語習得という学問分野は確実に進歩していて、少し前までの主流は何で、今の人気は何で、みたいなことがとっても平易に解説してある。自分に合うのはどういう方法だろうかと考えながら読むのも楽しい。
by kienlen | 2009-01-28 21:13 | 読み物類 | Comments(0)

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