日本人の夫を失ったタイ人の妻とビール

夫の店にいつも来ては飲んだくれているタイ人女性の夫(日本人)が亡くなって数日になる。昨夜、定例店番をしていたら友人達が何人も来てくれて賑やかだったのだが、だんだん引けていって、残り3人になったところに夫から「Mがこれから行ってもいいか。1人で寂しいから行きたいそうだ」と電話があった。そのMというのが夫を亡くした人だ。すでに遅い時間だったが、事情も事情だし「いいよ」と言った。数分後にMが現われた。ビールを飲みながら居合わせた全員で話し相手になった。夫がガンの末期で入院していることは聞いていたから知っている。病院と医師への不満をぶちまけている。ぶちまけるのを受動的に聞いているだけだと意味不明な点が多々あるので整理しながら聞く。するとつまり、病院から電話があって駆けつけた時はすでに死亡していて、死に目に会えなかったということだった。徒歩5分の場所にいるのに。うーん、それは辛い。せめてお別れの言葉を交わしたいという気持ちはよく分かる。しかも死期の近いことが分っているはずのように感じられるとなれば。

Mに子どもはいない。かといってタイに帰るつもりはない。この先も日本で暮らす。夫の遺族年金があるから大丈夫なようでもある。ま、新しい相手がすぐにもできるかもしれないし。お葬式はしてない。骨はアパートに置いてある。「お人形じゃないよ、人間だよ、お医者さんダメ」とか、そんな言葉ばかり繰り返している。つまり人間扱いしてくれなかったと言いたいわけだ。「この症状になって家に帰れた人は1人もいない」と言われたことも悲しかったという。正直といえば正直だからインフォームドコンセントとしては合格なのかもしれない。外国人相手に説明するのも骨の折れることではあると思う。私は実際の場面を知らないから何とも言えない。でも、もうちょっと早く連絡をくれて、最後の言葉を聞きたかったという点は、位置関係も知っている者としては妥当な不満に思えた。ただし症状が激変したんだったらしょうがないかも、という意見を言う人もいた。「もうちょっと早く連絡が欲しかった」というのは手紙に書いて病院に届けておいてあげることを伝える。偶然居合わせた者達でビール3本空ける頃に電話が入って「行く、行く」と言って、Mは次の店に行くために出て行った。私もすぐに店を閉めた。
by kienlen | 2009-01-21 21:17 | タイ人・外国人 | Comments(0)

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