杉山春『移民還流』

3日も飛んでしまった。年賀状も書かず、それとは別に連絡取るべき人にも無沙汰続きで何をしていたんだろう。たいしたことはしてない。本は読んだ。昨日終えたのが『移民還流-南米から帰ってくる日系人たち』で著者は杉山春さんという方。本屋で偶然見つけて買っておいたもの。この類は興味を持って読んでも、もうひと息!と声かけたくなるのが多いけど、この本は満足度高かった。しかもタイムリーである。私がタイから戻った90年代の後半、留守していた7年の間の日本の変化に目を見張った。対極にある政党の支持者だと思っていた人から「規制緩和で物が安くなった」とにこにこされた時には、どうなってんの、と思った。ここまで規制緩和したらタイになるじゃん、と思ったのもあって。で、その時にたまたま知り合ったブラジル人に誘われてバーベキューパーティーに行ったら、たくさんのブラジル人の中にポツンと日本人男性がいた。「この人達と同じ会社なのに、一体いくら給料もらっているかも知らないんですよ。電車が同じだから、眠っていて乗り過ごしそうな人に教えてあげたいけど、どう話しかけたらいいかも分からない」ととまどい気味だった。彼はここまで労働市場が基本から変わることを予測していたんだろうか。

その時、私はまだ意味が分らなかったのだが、その後ブラジル人と知り合う機会も増えて派遣会社経営という人もいて、なんとなく判ってきた。タイ人と接するようになったら、彼らを通じたブラジル人労働者像も垣間見た。つまり不法就労より日系人。タイ人の通訳で工場にいた時に「この子どう?」と写真を見せに来たブラジル人がいた。「この布団どう?」と同じ感じで。「ちょっとお、未成年じゃない、ダメだよ、ダメ」と追い払われていた。その頃には事情を少々は知るようになったから、あれが派遣会社の人で、ブラジル人の多くは派遣会社経由であることが分かった。で、当時はまだこの形態は違法だったはずだ。それが堂々とできるようになって日本人にも堂々と派遣が開放されて、それで今の騒ぎ。それがどういうことか、この本を読むととってもよく分かる。別にブラジル人だけの問題じゃない。制度というか、社会的要因の方に重きがおかれ過ぎているような気もするけど、そうじゃないと問題が浮かび上がらないからジャーナリスティックな意味ではちょうどいい加減なんだろう。両方の国で取材しているから立体的だし、適度に著者の姿も投影されていてシンパシーを感じるしで、今まで読んだブラジル人関係では一番面白かった。しかし、やはりここまで見えない存在にしているというのは恐るべきことで、知らせるべきことをいい視点で、形で描いていると思った。
by kienlen | 2009-01-04 19:20 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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